リーディングマラソンについて

ブックハンティングは大学に利益を与える 〜プロジェクト型ブックハンティングの提案〜 - 図書館情報学を学ぶ

id:kunimiyaさんがブックハンティング関連をまとめてくださり、冷静な分析をされており、そこで「プロジェクト型ブックハンティング」の提案をされました。

具体的には、大学のカリキュラムと連携して、講義中にブックハンティングを導入させることが考えられます。指定図書制度と異なる点は、学生自身が参考になると思う資料を選べるという点、そして資料の探し方、選び方を履修生間で共有できるという点です。

また、「自分を知る」ための書籍などは、就活セミナーなど大学のカリキュラム外のイベントと連携すればいい。要は、大学中のあらゆる団体とブックハンティングを通じたコラボレーションをしていくのです。

このように、ブックハンティング単体で行うのではなく、学習全体のプロセスに埋め込んで実施する形式であれば、単に趣味のために流行の書籍を選ぶという行動も抑止でき、効果的な選書方針を作る材料になるという点で大学にとって利益を生むことができるのではないでしょうか?


定義とかはまだよくわかりませんが、*1この「プロジェクト型ブックハンティング」に似ているかもしれない「リーディングマラソン」という取り組み紹介したいと思います。
  
「リーディングマラソン」は私が高校時代、学校図書館の取り組みの一つであったものに図書委員の一人として参加したものです。自ブログのある高校の学校図書館のいまむかし - 図書館学の門をたたく**えるえす。でも軽く触れています。

リーディングマラソンの仕組み

高校の図書館と国語科とが協力した取り組みで、教師が十何種類かの読書のコース(三冊程度)を作り、生徒に配布して、その中から最低1グループを選ばせて呼んでもらうというものです。どれか1コースを選び、B5くらいの用紙にその三冊についてそれぞれ数行ずつ感想を書いてもらって提出、というのを夏休みか何かの宿題にしてたような気がします。
コースは多種多様で、現代文学から古典文学、小論文対策までたくさんありました。またこの取り組みの面白いところは、教師だけが選ぶのではなく、そのコースの半分を図書委員会の生徒が作ったことです。
もちろん生徒は高校生なのでラノベ好きだし*2、ちょっと本読む子でも普通の小説しか読みません。そんな高校生が、同年代の友達に薦めたい本を三冊1グループにしていくつか出し合い、教師の作ったグループと一緒にリーディングマラソンのコースにしました。
それだけだとただの読書推進運動ですが、そこは高校図書館協力なので、このリーディングマラソンのコースに設定された本をすべて高校図書館にそろえました。(といっても半分くらいは元々あった本ですが)読もうと思えば誰でも読める状態にしたのです。

リーディングマラソンの内容

たくさんあるコースの量も多く全部はいえませんし見てもらった方が早いと思うのでー

http://www.osaka-c.ed.jp/senyo/library/index.html*3

こちらの下部に『リーディングマラソン2007』の資料二つがあるのでご覧いただけると思います。(高校のHPで公開されているものです。)
2007年verなので私は関わっておらず、かわいい(笑)後輩たちが作ったものです。が、雰囲気は似たようなものです。

私の年は友達が『黒乙一』や『白乙一』などと言いながら嬉々としてコースを組んだりしていました。
ちなみに私もいくつか作ったのですが、

卒業式まで死にません―女子高生南条あやの日記 (新潮文庫)

卒業式まで死にません―女子高生南条あやの日記 (新潮文庫)

遺書―5人の若者が残した最期の言葉 (幻冬舎文庫)

遺書―5人の若者が残した最期の言葉 (幻冬舎文庫)

1リットルの涙―難病と闘い続ける少女亜也の日記 (幻冬舎文庫)

1リットルの涙―難病と闘い続ける少女亜也の日記 (幻冬舎文庫)

この三冊を1コースにしました。コース名は忘れましたが、自称鬱三部作とか言ってたような気がします(笑)
高校生っていう、いい意味でも悪い意味でも普通の生活を送れるのが当たり前でそれに甘えきってるときにこういう本を読んで、何か少しでも考えてくれるといいなぁと思ったのです。

リーディングマラソン、その結果

夏休みの宿題(任意か強制かは忘れましたが)として提出された感想用紙(ダウンロードできるものとほぼ同じものです)を軽く読ませていただきました。
実際のその統計をとったわけではないので、個人的な感想になってしまうのですが、やはり全体的に図書委員が選んだ小説系のコースを選ぶ人が多かったと思います。
しかしそこは高校の面白いところで、むしろ普段読書しない人*4ほど、教師が選んだコースや文学、古典などを読んでいるような気がしました。また私が選んだ鬱三部作(笑)も、当時1リットルの涙が流行った後だったこともあり結構読んでもらいました。その感想を読むのがとても新鮮で、感想から普段本など読んだことないような人によく読んでいただいていたのですが、こんなことを思うのかと面白かった思い出があります。
普段読書する人はその感覚の延長で読みたい本を選ぶし、読まない人は全く知らないから新しい視点で本を選ぶんでしょうね。

で、っていう

この取り組みは「プロジェクト型ブックハンティング」とはまた違ったものであるでしょうが、・学生が選書に加わった点・授業(先生?)と共同で行った点、で何か参考になればと思い紹介しました。大学図書館は蔵書方針も講義内容も組織体系からして全く異なるうえに、読書推進運動はまたid:kunimiyaさんのおっしゃることと全く違うことですので、あまり意味はないと思いますが・・・
学校図書館としては、この取り組みは普段本を読まない人に対する読書推進運動としては非常に効果があったと思います。一つは授業を受け持つ先生が行い、半義務化したことと、同年代の生徒がコースを組んだことで選択の幅が広がったことが良かったのではないでしょうか。
 
当時はただコースを組んだり、あれがいいこれがいいと友達と話し合うのが楽しくて、こういった何かのプロジェクトだとか図書館の利用とか全く考えていませんでした。(今思えば、結果分析とかしてACに出せたのかも)そもそもこの取り組みだって、真剣に読書推進について考えたわけではなく、国語科の先生と司書の先生が茶飲み友達で仲が良く、ただ"楽しそう"というだけで行ったんだと思いますし
逆に、司書の先生と教科の先生、また図書委員と先生が仲良かったからこんな取り組みが出来たので、大学間でもそういった連携というのは大事だしできるといいんじゃないかなーと思います。終わり。
  

おまけ

前記事のコメントで教えていただいた海外の学校図書館の取り組みAccelerated Readerが、教えていただいた限り非常に面白そうなのですが、いかんせん英語力が追いつかず・・・
日本では制度上行うのは難しいとは思いますが、目先の何かで釣ることは別に悪いと思わないのです。それをきっかけに興味を持ってもらえばいいだけでー

*1:大学のカリキュラムと連携して、講義中にブックハンティングを導入させること」(大学の講義で行うブックハンティング)が「プロジェクト型ブックハンティング」ということでよいのでしょうか。

*2:リーディングマラソンの最低限の決まりは「ラノベは駄目、できるだけ文庫作品」でした。高校生が対象なので学問的な意味合いが少なく、読書推進の目的の方が大きかったので、生徒が選書するということが容易に出来たのだと思います

*3:出身もろばれですがそこは見ないことにしてください(汗

*4:これも実際に調べたわけではないですが、文章の感覚や先生の談話などから