システムズライブラリアンの育成は可能か?(完成)

さっさと宿題をかたずけてしまおう。

システムズライブラリアンの育成は可能か?(途中) - 図書館学の門をたたく**えるえす。
の続きです

実際、今回の学郡再編(カリキュラム変更)でシステムズライブラリアンの養成が可能になるのか

筑波大学 情報学群 | 知識情報・図書館学類

ここのサイトに掲載されている開設科目一覧と科目の概要
を参照にします。ここで引き合いに出す情報はすべてネット上で公開されていて誰でも自由に見ることのできるものだということです。

さてさて、では簡単に知識情報・図書館学類の学生がどのような科目を学ぶのかを見てみましょうか。

【1年次】*1
(学郡共通科目)

  • 情報社会と法制度(選択)

(知識情報学への導入)

  • 知識情報概論
  • 哲学
  • 情報システム概説(選択)

(情報リテラシ

(プログラミング基礎)

  • プログラミング実習1
  • プログラミング実習2

(数学)

  • 情報数学
  • 基礎数学A
  • 基礎数学B(選択)

(統計とその応用)

  • 統計


【2年次】
(学郡共通科目)

(統計とその応用)

  • 量的調査法
  • 多変量解析

(知識情報演習)

  • 知識情報演習1
  • 知識情報演習2

(語学)

  • 専門英語1
  • 専門英語2

(知識と人間)

  • 情報探索論
  • 質的調査法
  • 情報行動論
  • 知識発見基礎論

(知識とシステム)

  • 知識資源組織化論
  • データベース概説
  • コンピュータシステムとネットワーク
  • 自然言語解析基礎

(知識と社会)

(メディアの理解)

  • テクスト解釈

(その他)

※2年次は演習以外すべて選択科目になります

3年次以降は専攻課程に分かれるので省略。
専攻課程は3つあり、情報経営・図書館、知識科学、知識情報システムのいずれかを専攻します。
専攻課程以外の授業をとることも可能ですが、基本は専攻課程のみの授業をとります。


さてさて、前回述べたように、システムズライブラリアンにライブラリアンとしての知識とシステム系の知識の両方を期待する場合、システムズライブラリアンを養成するためには3年時以降の専攻に別れる前に、ある程度の(専攻以外の)知識の取得が望まれると私は考えます。
そこで、共通である1年次と2年次の科目だけ抜粋しました。ご覧のように、知識情報・図書館学類のうち、「知識情報」の部分が重要視されていることが分かると思います。

「システム系」的な授業

こちらは充実していて、1年次に数学3つに統計、2年次に統計の応用があります。
また情報基礎でシステム系の基礎の知識から学び、2年次にもデータベース概説やコンピュータシステムとネットワークなどの科目があります。
内容についてはまだ詳しく分かりませんが、システム系の基礎的なものは十分学ぶことはできるのではないでしょうか。

「ライブラリアン」的な授業

科目名では「生涯学習と図書館」ぐらいですが、実際は概略に結構記載されていて、

科目名 概要(略)
知識情報概論 総合科学としての図書館情報学の全体像、知識情報学への発展を…
メディア社会学 図書館、ネット、マス・メディアなどを研究する際…社会学の入門的知識を学び…
生涯学習と図書館 生涯学習の意義を理解し、学習生活を効果的に援助する方法について学ぶ。
経営・組織論 図書館の経営や情報システムの構築のための、経営概念、経営管理、意思決定、組織、人間行動等についての基礎を学ぶ。

結構といってもこれぐらい。
しかも実際具体的な図書館に触れるのは「生涯学習と図書館」と「経営・組織論」ぐらいでしょうか。

考察(個人的な)

引用するだけで体力を使い果たしてしまったので薄く…

言いたいことは、「共通科目として学ぶのがこれだけ(主にライブラリアン的なものについて)で、システムズライブラリアンとして活用できるのか?」ということ。
ライブラリアンの基礎としておさえておきたい「図書館論」*2は情報経営・図書館専攻の科目なので、基本的にその科目を専攻した人のみが受講します。

ここで可能性を2つに分けます

  1. 2年次までの共通科目でライブラリアン的な知識は補完できるというもの
  2. 2年次までの共通科目でシステム系的な知識は補完できるというもの

個人的にはどちらもありえないのではないかと。
システムズライブラリアンに必要とされる知識が具体的に定まっていないため、はっきりとはいえませんが、
ライブラリアン的な知識はあの2科目で補完できるとは思えないし、システムズライブラリアンとして実際に勤務する際、公共図書館勤務なら「図書館論」、大学図書館勤務なら「学術情報基盤論」*3、企業など専門図書館勤務なら「経営情報システム論」*4ぐらいは必修になるべきなのではないでしょうか。

またシステム系な知識についてですが、2年次で開講されているシステム系の科目が選択授業であるということ、単位数の制限はつきますががんばれば受講しなくてもすむ科目であるということがどうなのかなと思います。
これは経験的な知識なのではっきりと証拠を示せませんが、以前から司書を目指す人たちには全体的に文系が多く、理科や数学、システム系の知識に弱い特徴があると思います。数学が苦手な人が、わざわざ選択科目である数学の授業をとるでしょうか?程度はあるにしても、一般的な人間の心理としてできるなら避けようとするのではないかと思います。
理由は、受講しなくても卒業できること、また司書になるために必要ではないからです。


今欠けているものは「システムズライブラリアン」の認知度と、それにライブラリアンとシステム系の両方の知識が必要だという認識です。
司書は図書館についてだけ学んでおけばいい、システム系は情報っぽいものだけ学んでおけばいい、そんな考え方が広まっているために、いくらシステムズライブラリアンになることが可能なカリキュラムを組んでもらったとしても一向に活用できずに終わってしまうのではないかと思います。
それはもったいないことですし、大きな損失です。*5
システムズライブラリアンを目指すなら、システム系の専攻に進みつつ、個人的に努力して情報経営・図書館専攻の科目を受講するのが一番いい方法なんじゃないでしょうか。*6

結論として、「養成は可能だけど実際育つかは微妙じゃない?」みたいなことで締めたいと思います。
  
  

  
あー…疲れた…
  
  

補足(12-05 17:30)

「養成は可能」なのだから、これからシステムズライブラリアンを育てたい人が頑張って広報して、なりたいって人がでてくれば、養成にかかる個人的な負担は少ないし育つとは思う。これから次第な面が大きいのではないでしょうか。
そのためにはシステムズライブラリアンの定義や存在意義をもっと明確にするのが先かもしれませんが・・・

また、確かに司書っていうのはもともと現職の人のスキルアップをはかろうとする傾向が強くて、日本図書館協会なんかもそっちの方を推奨してるんじゃないかと思います。
ただ現職の人のスキルアップだけでまかなえてしまえるのなら、私たちが今ここに存在する意義が薄れてしまうような気がして、なんとかならないかなーとも思うのです。


さて、そろそろ出かけますか

*1:全学共通科目は省略

*2:公共図書館を中心に地域に対する情報サービスの提供について論じる

*3:要約すると大学図書館について

*4:要約すると企業や政府における情報システム云々について

*5:システムズライブラリアンが養成できたとして、実際に活躍する場所があるのかは棚に上げておく問題

*6:個人的に努力して知識を得る はしかし以前とあまり変わらないのではないかとも