図書館非正規職員のスタバ化計画

非正規職員の問題点

非正規職員の問題を取材する中で、待遇の低さはもちろん前提としてあり、それが悪循環を招いている観はあるものの、何より一番の障害になっているのは「やる気の報われなさ」だと感じた。
給料の低さや時間、仕事量の制限もあるものの、それ以上に、委託や派遣という身分で与えられた仕事以上のことをやろうとすると、雇用側(図書館の正職員を含む)からストップがかかってしまう。非正規職員なんだから、おまえはそんなことまでしなくていいんだよ、と。
問題は、自治体の異動から図書館の知識がほとんどない職員が正職員となり、図書館に興味関心があり、自己研鑽も続けた職員が非正規職員となるパターンもあることだ。
(もちろん、その逆の場合もある。それが全体的にどれくらいの割合なのかはまだ明らかになっていない)
勤務している図書館の「良くないところ」が明らかであり、それを是正する能力があるにもかかわらず、雇用形態や立場などから認められないという理不尽な環境は、一体どれほど辛いものだろう。
最近聞いたあまりにも理不尽で酷いと感じた話は、その図書館の正職員が決めたルールを委託職員が守らなければいけないのだが、そのルールが「わけがわからない」ものだった。例えば、子供に当たると危ないから図書館内ではブックトラックが使用禁止なのだそうだ。もしその正職員が司書資格を持っていたとしても、私はその人に司書の専門性があるとは思わない。*1 *2
もしこれが少数のケースだとしても、図書館職員の6割以上を非正規職員が占め、今後もその割合が増加する中で、そして能力ある若い図書館職員志望の求職者が正職員につけず、非正規職員に甘んじるしかない現状で、その少数のケースが今後広がっていく可能性がないとは誰も言えないだろう。

スタバ化計画

TRC,丸善のような比較的大きな企業が図書館の業務委託や派遣を請け負っている。
この2社が他の人材派遣会社と異なるのは、書籍や出版流通など、その他に財政的基盤を持っていること。ある程度のすみ分けができていること。その他の事業からも図書館と関わっていること。職員研修などに力を入れていること。(そしてDNPの傘下であり、共同事業を行いやすいのではないかということ)などである。
直接関わったことはないので、推測でしかないが、この2社は図書館に関するノウハウはただの人材派遣会社とは段違いだろう。
そこで、「図書館非正規職員のスタバ化計画」と名うった非正規職員の能力保障プログラムを提案したい。


スターバックスのアルバイト(パートナー)は、他の飲食店のアルバイトとは全く異なる。私の従兄も働いているが、その熱の入れようったら、学業よりも面白いらしい。
何が、ただのアルバイトにそこまでの「やる気」をもたらせているのか?
スターバックスには、「やる気」のあるアルバイトにはそれに見合った待遇、そして現実的な条件以上に、個人に満足感を与えるようなプログラムがたくさんある。能力の高い人には普通とは違う「ブラックエプロン」が与えられ、一握りのブラックエプロン同士で全国一位の座を争う大会まであるという。*3
参考:http://www.starbucks.co.jp/barista/schooling/career.html


そこまでエンターテイメントに徹しなくても良いが、スターバックスを例にしたような職員の「やる気」がむくわれるようなシステムがあれば図書館で働く非正規職員にプラスに働くのではないか。
まず、「やる気」が出て仕事に充実感が感じられるようになると、積極的に自己研鑽するようになるし、長続きもするというのがひとつ。
また、どこかが能力を客観的に保障してくれると、雇用する側の自治体も参考にできるのではないか。
余所の部署から異動した正職員と、司書の「ブラックエプロン」の2人の意見が対立した際、どちらの意見が「より良い図書館」に繋がっているかは、一目瞭然である。


なんていうお話は、もちろん肝心なコスト面での解決を図れていないし、穴だらけではあるのだけど、そんな夢のようなお話があったら、今苦しんでいる人たちの少しは救われるのかな、と思ったのでした。

*1:そして、日図協のシステムでは、そんな中で上級司書の認定を受けるのはこの正職員なのだ

*2:私だったら、こんな競争原理も何もない職業にはつきたいとは思わない。まともな専門性の指導を受けた学生なら、そう思うのではないかと思う。そうして、図書館の専門性も消滅していくのではないか。能力の高い人間は、それなりの試験を突破して正職員の職に就き、そこで地道に仕事をして活躍して、周囲に模範を示す道がある、という話も聞いた。しかし、私はその道も歩もうと思えない。それでは専門職として職員を雇えない図書館を切り捨てて、見捨てることになる。これはもはや制度の問題で、自治体や供給企業などの利害が複雑に絡んでおり、一人では止めることのできない雪崩のようなものなのだ。

*3:いつかのテレビ番組で特集されていたのだけど、そのうち「日本一の司書」とか放送されても良いと思う