統計で遊ぼう☆市民にとって良い図書館は?(政令指定都市編)

図書館界には「日本の図書館:統計と名簿」というとても充実した統計データや、各年の付録調査として様々な調査が実施されデータが蓄積されているにも関わらず、それらを詳細に分析した結果は残念ながらあまり見当たらなかったりします。(もしくは数字ばっかりで見づらくて分かりにくかったり。)
自分もあまり大したことはできないので何も言えませんが、せっかくの統計データだし、データを使って何か面白いことができないかなー、と遊び気分でいじってみました。
あまり本格的に取り組んだわけじゃないので、至らない点があっても大目に見てもらえればと思います(^^;)



*統計データを使ってみることが第一の目的なので、もちろん他にも様々な要因はありますが、今回はあくまで客観的な数値だけを考慮します。
政令指定都市を対象としたのは、遊ぶのに図書館数が適当であり(多すぎず少なすぎず)、かつある程度人口が限定されているので、規模の点からも比較しやすいためです。
*出典はすべて日本図書館協会『日本の図書館:統計と名簿 2009年版』です。

「市民にとって良い」とは

今回は統計データを使って測れる「良いところ」ということで、「市民にとって良い」図書館を、1つは、市民が利用できる設備・資料の量、もう1つは、実際に市民がどれだけ図書館を使っているか、という点から見てみたいと思います。
具体的には、市民が利用できる施設・設備は「(政令指定都市内の図書館)1館あたりの奉仕人口」「1人あたりの蔵書冊数」、実際の市民の利用率は、「蔵書回転率」「1人あたりの貸出冊数」を算出します。
算出方法は以下の通りです。

1館あたりの奉仕人口 奉仕人口/図書館数
1人あたりの蔵書冊数 蔵書冊数/奉仕人口
蔵書回転率 貸出冊数/蔵書冊数
1人あたりの貸出冊数 貸出冊数/奉仕人口

全体を2部に分け、それぞれ、各指標の順位の合計が最も少ない上位5館を掲載します。

利用したデータ

利用したデータは以下の通り。

政令指定都市 図書館数 奉仕人口 蔵書冊数 貸出数
札幌市 10 1880138 2414187 7412011
仙台市 7 1003733 1720247 4387395
さいたま市 25 1188340 3207514 10575303
千葉市 14 917854 2027660 4628181
横浜市 19 3585785 4006052 11027351
川崎市 12 1340801 1885354 5917961
新潟市 18 803470 1658539 4558838
静岡市 11 710854 2205742 4462583
浜松市 21 790302 2077581 4336080
名古屋市 20 2164640 3024616 11075812
京都市 18 1387935 1712922 6931294
大阪市 24 2516543 3541122 12102918
堺市 14 833694 1846163 4362409
神戸市 11 1505111 1804211 6698543
岡山市 10 685564 1480485 4093374
広島市 11 1149478 2043947 5060927
北九州市 17 982836 1650203 3142922
福岡市 10 1375292 1815332 5080626

市民が利用できる設備・資料

政令指定都市 1館あたりの奉仕人口 1館あたりの奉仕人口の順位 1人あたりの蔵書冊数 1人あたりの蔵書冊数の順位 総合順位
浜松市 37633.4 1 2.63 3 1
さいたま市 47533.6 3 2.70 2 2
静岡市 64623.1 6 3.10 1 3
新潟市 44637.2 2 2.06 7 4
堺市 59549.6 5 2.214 4 5


1館あたりの奉仕人口が少ないということは、人口に対し図書館数が多いということです。
また、1人あたりの蔵書冊数が多いということは、より多くの資料を市民に用意できているということです。
と、いいつつも、この表の上位はほとんどが奉仕人口が少ない政令指定都市でした(さいたま市以外)。母数(奉仕人口)が少ないのだから順位が上にきて当然だろうと、あまり上手くない指標ですね(^^;)
政令指定都市などでは一部地域に人口が密集している場合が多いのだから、図書館との距離的などに差異がなければ、1人あたりの図書館数が少なくても住民からの「利用しやすさ」は変わりません。
また、1人あたりの蔵書冊数が多くても、奉仕人口の多い自治体と蔵書冊数を比較すれば、人口の多い市のほうが少ない市の何倍もの蔵書を有しているわけです。
名目上は、インフラの整った市に見えなくもありませんが、実態にはいささか疑問が残るという点で、「統計で嘘をつく」ことの良い例かもしれません(笑)

市民の図書館の利用率

政令指定都市 蔵書回転率 蔵書回転率の順位 1人あたりの貸出冊数 1人あたりの貸出冊数の順位 総合順位
さいたま市 3.30 5 8.90 1 1
名古屋市 3.66 3 5.12 7 2
京都市 4.05 1 4.99 9 3
岡山市 2.76 9 5.97 3 4
神戸市 3.71 2 4.45 11 5


蔵書回転率も1人あたりの貸出冊数も割と広く用いられている評価指標だけあって、こちらは割と意味のあるものではないかと思います。


今回のデータでは、特にさいたま市の図書館の高評価が印象に残りました。
さいたま市は全18都市中9位というわりと中規模な人口を有しながら、図書館数や1人あたりの蔵書冊数も多く、かつその豊富な蔵書も市民によく利用されているようです。
というか、登録者数ではなく奉仕人口で貸出冊数を割って、1人あたり8冊とか、どこかで数字の計算を間違えたのではないかと思ってしまうほどですね;


6/7 1館あたりの奉仕人口を訂正