5月28日の衆議院文部科学委員会における図書館の話/指定管理者制度への言及
JLAメールマガジンでもお知らせされていたように、5月28日の衆議院文部科学委員会で公立図書館への指定管理者制度導入について言及されたようです。*1
会議の議事録はこちらから
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm(衆議院の会議録)
以下抜粋
湯原委員の質問
時間の関係で二つだけ聞きたいんですけれども、一つが、近年、指定管理者制度あるいは市場化テスト等、民間に委 託する傾向が図書館でも、自治体に見受けられると思います。冒頭、大臣に申し上げたように、地域主権という問題がありますので、国が一律にああせいこうせ いと自治体にはできないと思いますけれども、私自身の思いを申し上げるならば、当然、図書館においても税金が使われる以上、コスト意識というものは必要で あろうかと思います。ただ、あのとき*2の質問でも私申し上げましたけども、図書館というものの位置づけとして、やはり図書館は、本来知る権利を保障するところ、あるいは所得の 格差に関係なく図書館を利用して学ぶ権利も保障する、あるいは情報の拠点にもなっているものであります。
こうしたことを考えると、私はあの質問でも申し上げたように、民主主義のまさにとりでではないかなというふうに申し上げたわけでありますけども、認識としては、当然、貸し本である建物ではないわけでありまして、図書館はそういうソフトも含めた非常に重要なものである。
ところが、現在の流れの中では、指定管理者制度、市場化テストといって、ただ単に民間委託して、貸し本の建物に化する傾向があるのではないかという危惧 を持っているのでありますけれども、地域主権の問題の中で、先ほど申し上げたように、なかなか国としてはああせいこうせいとは言えないのかもしれません が、ただ一点、どのような感想をお持ちなのかだけはお聞きしたいなと思いますので、御所見をいただけたらと思います。
高井大臣政務官の応答
本当に御指摘のとおりというか、図書館の重要性というのは本当に委員おっしゃるとおりだと思います。指定管理者制度の導入率は、公立図書館において今六・五%、つまり全国三千百四十のうち二百三館という現状になっておりますが、この問題点について、まさに現場からは、開館時間が延長されたなどという利用者のニーズに即した運営が推進されたという部分もあるのはあるんですけれども、その他、難点としては、指定期間が短期であるために長期的視点に立った運営が難しいといった点や、職員の研修機会の確保とか後継者の育成機会の確保などが、長期的なことができないために余計難しいといったことなど問題点が指摘されております。
それで、我が文部科学省におきまして、二十一年度に指定管理者制度の導入状況について調査研究を行ったところですと、制度導入の際の留意点といたしまし て、安定した運営が可能な指定期間を検討すべきということや、職員に対しても安定的な処遇を確保すること、それから、若手の人材養成も含め、長期的視点に立って育成を考える、それから、自治体が指定管理者の業務の履行状況について適切にモニタリングをすることなど、こういうことを指摘いたしまして、まさに おっしゃったとおり、指定管理を入れるかどうかは各設置者の判断ではございますけれども、こうしたことをぜひ踏まえて参考にしつつ、よく熟考していただいて、よりよい図書館サービスの充実のために私どもも頑張りたいと思いますし、各設置者の側でもぜひ努力をしていただきたいと思っています。
平成20年度衆参文部科学委員会では、社会教育法改正に関する付帯決議がなされ、その際に社会教育施設への指定管理者制度導入にはその弊害を認識したうえで十分配慮することと言及されていた。*3
地方自治法改正から7年がたち、僅かながら導入館も増え、事例が多数出る中、導入による「弊害」とは何か、またそれにどう対応するかを考慮し、やはり最終的には設置者である地方自治体の判断に依るとしている。
日図協は一貫して指定管理者制度への反対の姿勢を示しているが、地方自治体の判断により、指定管理者制度の導入がわずかでも増加しているのであれば、導入した図書館においても、どのように自治体が「モニタリング」し、「長期的視点に立った育成」を行えばより良い図書館として機能できるのか、そういったHow toの部分を提唱していくことが、唯一の業界団体としての役割なのではないでしょうか。
どちらかというと、今は(日本は?)文部科学省の図書館の振興の事業がわりとその役割を担っている気がしますが…