メディアを通じたライフスタイルの提案:日本郵政グループ「モヨリノ」を例に

ご無沙汰しておりますふもってぃです。
引退したにも関わらずもっぱら楽器を弾いていたり、相変わらずマイペースに生きています。
コメントを下さった方には長い間音信不通で申し訳ありませんでした。
今後も変わらず不定期な更新になるかと思いますが、よろしければお立ち寄りください。
  
先日、時間外ATMの利用に久々に郵便局に行ったところ、こんな雑誌を発見しました。

http://www.jp-network.japanpost.jp/moyorino/
普通に本屋さんやコンビニで売ってそうなおしゃれな表紙に、思わず手にとってしまいました。
日本郵政グループが作成・発行しているフリーマガジンの「モヨリノ」というそうです。
http://www.japanpost.jp/pressrelease/detail.php?code=2008092601
表紙もさることながら、その内容も普通に素敵。
vol.6にあたるこの号では「こころも、からだも。ほっと、あったか。」を特集に、

  • あたらしい個性的な年賀状づくり
  • 冬のボーナスからはじめる貯蓄
  • 子どもの教育費は早めの計画を
  • 宇都宮と長崎、絶品餃子を食べ比べ

などの記事が組まれていました。


内容をもっと詳細に紹介したいのですが、百聞は一見にしかずということで、是非お近くの郵便局で実物を手にとって見てください。
何の雑誌なんだろうと一見不思議に思うくらい、とっても素敵です。
  

くらしの中に郵便局

もちろんデザインもさることながら、このフリーマガジンでとても気に入ったのが、
コンテンツの中の「郵便局」の扱い。
自社の広報誌として(無料で!)発刊しているのだから、企業にとってのフリーマガジンは、消費者を自社に惹きつけることが第一の目的になります。
図書館にとっての「図書館だより」もしかり。それらは総じて、読者に「見て見て!」といわんばかりに自分のことをアピールしようとします。
「モヨリノ」にも、日本郵政グループに関する事業や店舗の紹介などがあります。なのに、記事を読んでいても「見て見て!」と自分をアピールするわざとらしさが微塵も感じられません。あくまで自然に、そこに郵便局があるのです。
巻頭インタビューの優香は家族からの手紙について心温まるエピソードを紹介、
特集の「こころも、からだも。ほっと、あったか。」では部屋のコーディネートや体の温まるレシピ、本やDVDなどの紹介しており、ここには郵便局は全く出てきません。
3枚目の画像にあったグルメ記事は、文末に郵便局のカタログ販売の案内があり、その次のページには「ご当地郵便局発見」と題して地方の特徴ある郵便局などを紹介。
後半約20ページは「日本郵政グループおすすめの商品・サービス」として日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、郵便局がそれぞれページをとって自社についてアピールしていますが、それらの記事もテーマが「あたらしい個性的な年賀状づくり」であったり、切手やラッピングのエッセイ、一般的な貯蓄や教育費についてなど、身近な生活において「ため」になる情報ばかり。見開き2ページのうち、右に広告、左にエッセイが掲載されているのですが、雑誌はページをめくって最初に目に入るのが左ページなので、エッセイばかり楽しく読めて広告については全然気にならない。上手いな、と思いました。
  

ライフスタイルそのものをデザインする

おそらく読者対象である家庭持ちの主婦に向けた、質の良いフリーマガジン。
一見、あくまでメインテーマは身近な生活の中のネタを持ってきて、そこにごくごく自然に「郵便局」の存在を絡ませることで、読者は無意識のうちに生活に「郵便局」を取り込んでしまいます。
優香のインタビューを読んで、お父さんに手紙を出してみようかな、と考えたり
ついつい食べたくなっちゃって、グルメ記事の鰹まんや宇都宮餃子を頼んでみたり
いつもメールで済ましてたけど、かわいい年賀状があるから、たまには出してみようかなと書いてみたり…
メディアを通じて身近に「郵便局」のあるライフスタイルを提案する。それを自然に取り入れる。
サービスや商品についてこれでもかとアピールするよりも、よっぽど印象が良く効果の大きい広報手段ではないでしょうか?
  

こんな雑誌、図書館にもあればいいな

要はそれが言いたかったんですけどね(笑)
図書館雑誌は図書館員向けの勉強用だし(表紙はどうにかしてほしい)、ず・ぼんも問題意識の強い本だし、どうも図書館っていうのはおしゃれなデザインとは縁遠い。丸善のLibrary Newsも、デザインは素敵だけれど学術的な感が否めない。
最近は少しは図書館をテーマにしたおしゃれな本もあるけれど、こんな雑誌みたいに、図書館を身近な暮らしに取り入れる「ライフスタイル」を提案する雑誌があったら、きっと自分は毎号心待ちにして楽しむでしょう。
何より、今、図書館を知らない人たちに、もっと図書館の魅力について知って欲しい。利用して欲しい。
それには、日本郵政グループの「モヨリノ」みたいなマガジンがとってもぴったりくると思います。
いろんな作家さんや本、メディアなど、ネタは郵便局よりも豊富にありそうだから、なおさらそんな気持ちが強いのでしょう。
日本図書館協会がこういうプロジェクトをやってくれれば、それはとっても日本の図書館のためになると思うのだけれどなー
というか、日本図書館協会以外に適当な団体が思いつかない。ALAの雑誌は、少なくとも図書館雑誌よりは「モヨリノ」寄りだと思いますし。
そんな夢のような日々がくることをちょっとだけ期待しています