政策の現場は思想主義とは違うんです

今朝の討論番組から、印象深かった一言。

竹中平蔵金子勝の両氏による討論で、司会者の進行に添って進んでいた。
竹中さんの主張は主に以下の通りで、

  • ジニ係数小泉政権でむしろゆるやかになった→経済が成長したから
  • 小泉政権以前からジニ係数は拡大している→高齢者の増加
  • 格差の被害は主に若者が受けている↓↓
  • 会社が社員を解雇できないとした高裁の判例
  • 同一賃金でなくてもよいとした地裁の判例→司法の誤り
  • 以上の理由のために、有能な若者が活かされない
  • 小泉改革は不十分、
  • 政策の現場は思想主義とは違う←心中主義は破綻した?というつっ込みに対し

財政拡大のためには何をすべきか?という論に対し、相手の金子さんはオバマなどを例に環境のエネルギー革命を引き合いに出していたが、「具体的に何をすべきなのか?」という強い口調に終始押されっぱなしであった。
討論としては、ほとんど竹中さんの出ずっぱりだったように思われる。
見ていて、本当に竹中さんは口が上手いなと感じた。批判ではなく、純粋に議論が上手い。リアルタイムの討論で、しかもテレビの前だというのだから、よほど話が上手くなければあそこまで自説を推し進められない。
対して終始押されていた金子さんは、その主張は如何として議論の技巧で押されていたために弱く見えた。経済の知識がない一部の視聴者は、そういった雰囲気で議論の是非を判断してしまう人もいるだろう。その点がメディア的な問題点か。
としても、休日の午前から面白いものが見れたのは良かった。こういう討論を全国ネットで放映するのは、議論の是非よりも、広く一般の市民に経済に関する好奇心を刺激するという点で良いと思う。
題に挙げたのは、方々からよく竹中さんの詭弁と称されることが多く、小泉政権の責任者の言い逃れと捕らえられる発言だが、その意図自体にふもってぃは同意する。
思想主義なくして、方々の政策や施策の方向性を決定することはできないが、逆に現場や現実に依存する実際の政策や施策に思想主義を完璧に当てはめることもナンセンンスだ。実際問題はもっと繊細で誤差が多く、1+1が2にならないものだろう。演繹的な手法は考えられるが、帰納的なものはどうもしっくりこない。そうすることで過去の事例を体系づけて批判することは大事だが、それに固執しすぎて現実への対処が停滞することは避けなければならないと思う。
ただ、竹中さんはポジティブであり、それを批判する人は彼が反省の振りをしないことに腹を立てる。いくつかのブログの意見を見ると、そういう所感を抱いた。ふもってぃは経済について論じられるほど深い知識はないので、何も言うことはできない。
ひとつ気になったのは、ジニ係数に関する話*1で、
竹中平蔵はコイズミ政権下でジニ係数は上昇しなかったというが、毎日新聞と神野直彦の調査によると、コイズミ政権下でジニ係数は急上昇していた - kojitakenの日記
こういった反論もある。この事の真偽については、どうなのだろう…。
  
現実と思想主義の話を持ち出したのは、図書館情報学においてそのギャップをよく感じるからである。
図書館情報学では、数値で示されて万人に理解しやすい(=お偉いさんを説得しやすい)実証研究が重視される。現実に即して正論なのだが、そればかり行われて思想主義が欠けては元も子もない、のではないかという意見を抱くほど、図書館情報学において思想主義に関する理論的な話はあまり普及していない*2
そう思ったので、最近は情報哲学や公共哲学などの文献を読んでいた。哲学を専攻する身近な人の影響もあったのだが。
しかし、公共図書館を論じるに置いて欠かせない「公共性」という言葉は、本当にどの公共図書館に関する文献を読んでも出てくるけれど、では「公共性」とは何かという理論的な話は、日本の図書館情報学の分野ではほとんどされていないように思われる。海外の著作がようやく翻訳されたところか。
そういうところに最近興味を持っている。
  
話は変わって、そもそも最近更新していなかったのは、心を入れ替えて真面目にヴァイオリンという美しく面白い楽器に取り組んでいたからでした。一日三時間毎日練習したり、体育会系吹奏楽部みたいなノリで、でも練習すれば上達してそれがまた面白く、本当に夢中になって楽器を弾いて幸せな毎日を送っていました。
しかし、先日、ちょうど演奏会の前日に車にひかれまして、右手首骨折というけがをおいました。全治一ヶ月。右手首なので字も書けず生活も不便になるのに、ひかれたときはとにかく楽器が弾けないことばかり考えてショックで仕方ありませんでした。今の私からヴァイオリンを取り上げるのは、生きがいをまるまる取り上げられたのと同じだったのです。
シューベルトのグレートも、まだまだ練習しなければいけなかったのに。そもそも、シベリウスフィンランディアボロディン中央アジアの草原からは、初めて2プルという場所で弾かせてもらえて、ホールリハも楽しくて仕方なく、本当に楽しみだったのに…もう一生弾く機会がないだろうことが、残念で仕方ありません。
まあ過ぎたことを悔やんでも変わらないので、この機会を活かして勉強に時間を割こうかなと思います。ふもってぃは本を読むときに線を引く癖があって、それもできず満足ではないですが…パソコンのキーボードを打てることが救いですね。授業に持っていけるような軽いパソコンではないのが残念。
車を運転する方は、どうぞお気をつけください。特に学生の方は。万が一事故にあわれたら、それがどんな経緯によるものでも、まず被害者の怪我を心配してあげてください。
  
  

      1. +

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*1:ジニ係数の話が出たためにニュースに注目したので、それ以前の討論は聞き流していた。残念。ジニ係数は国民の経済格差の広がりを数値的に実証するもの。0〜1の間で1に近づくほど格差が大きく、リンク先での記事にもあるが、2007年2月4日の毎日新聞の記事で紹介された。ちなみに日本の格差については、OECD経済協力開発機構)の報告書によると、その国の平均所得の半分しか所得のない相対的貧困者数の割合がアメリカに次いで二番目に多い、らしい。最近読んだ図書より。

*2:CiNii 論文 -  ジョン・E・ブッシュマン著;川崎良孝訳, 民主的な公共圏としての図書館:新公共哲学の時代に司書職を位置づけ持続させる, 京都大学図書館情報学研究会, 2007.12, 日本図書館協会(発売), 277p, 22cm, 定価4,200円(税込), ISBN 978-4-8204-0718-8