ある高校の学校図書館のいまむかし

今日久しぶりに地元の高校に顔を出して、よく世話を見てもらった司書の先生とお昼を食べてきました。その席で高校の学校図書館の現状についていろいろお話を伺ってきたので、少し書きたいと思います。

学校図書館における「貸し出し至上主義」とそれへの不満

卒業したということやそれなりの業界の事情について学んだということもあって、在学中には聞けなかったお話なども聞きました。
ひとつが前任の司書さんと現在の司書の先生との学校図書館の捕らえ方の違い。
前任の司書さんというのはどうも貸し出し至上主義というか、生徒に本をたくさん借りてもらうことが一番だと思っていたようです。そのために、与えられた予算で生徒が好きそう・読みたいと思う本をたくさん買って貸し出ししていたようです。ラノベや漫画とかとか。*1
また生徒が本を借りてくれれさえすればよいので、資料整理も積極的とは言えないようでしたし、貸し出し手続きも従来の紙のままだったそうです。
そんな前任の司書さんがいなくなって今の司書の先生がきたのが今から4年前の4月。今の司書の先生は昔から貸し出し至上主義には懐疑的だったそうで、高校の図書館というものは貸し出し冊数を気にするよりももっと教育に寄与するべき(実際はこんな難しい言い方ではないですが)として、それまで買っていた漫画類は一切買わないことに決めたそうです。
またおざなりになっていた資料整理にもとりかかり、その先生が独自にパソコンにデータ入力を行うようになって、私の学校図書館では先生が赴任した2年後にはバーコードを利用したカードで貸し出しが行えるようになりました。
先生がいうには、確かに生徒がたくさん図書館を利用するということは大事だけど、そのために必要ないような本ばかり買うのは学校図書館として違うのではないか。その先生はわりと他の教科の先生とも仲がよくて、教科の先生が読みたい、授業に使いたいと思うような本も積極的に購入してくれているのですが、そういった風に役立てる学校図書館であるべきではないかと言っていました。*2

学校司書の水準

先生はもう結婚なさった娘さんがいるような年齢で、パソコンなどコンピューター関連は苦手なものの独学で学ばれたそうです。先生と同年代の司書さんが学校図書館には多いそうなのですが、中でも先生はまだがんばってやっているほうで、学校図書館の司書さんでもパソコン関連を充分に扱えていない人はまだ多いのだとか。
大阪府では府の統一した基準の下それぞれの学校図書館の蔵書の横断検索ができるように動いているそうです。そのためにはデータ入力や蔵書の電子的な管理が必要です。公共図書館などではコンピュータに強い人がいればなんとかなりますが、学校図書館では司書はたった一人しかいません。その司書さんがそれを扱えなければデータ化はできないのです。システムズライブラリアン云々と言う前に、情報関連の技術の底上げが必要なのかなと思いました。
  

学校司書のお仕事

今の先生の主な仕事は、独自に蔵書をデータ化した際につけた7ケタの番号を、全部大阪府基準の12ケタに張り替えることです。
私もよくこき使われてバーコードの貼替え作業していたので分かりますが、地味で面倒くさくて単なる事務作業です。しかもやたら時間がかかる。最初にデータ化するのは約2年くらいかかりました。
それが司書じゃないとできない、専門的な仕事ではないことは一目瞭然です。ひたすらちまちまちまちまバーコードを貼っていくだけです。
また先生自身、自分の一番重要な仕事は学校に行って図書館を開けることだと言われました。

ただだからといって、事務員だけで学校図書館ができるかと言われればそうじゃないと思うのです。というか、思いたいのかな。選書や教育関連、学校図書館が担うべき仕事はもっとあると思いますし、担って欲しいです。
  
  
話していて思ったのは、やはり現場の感覚と理論や学問的な話し合いはかけ離れていると言うことです。
先生方からしてみても、最先端をいく話し合いには知識的なものも含めてついていけないそうですし(アーカイブなどの横文字の意味が分からないようで)こちらからしても現場の感覚は想像できないものです。
うちの学校図書館はリーディングマラソン*3や特別に予算が下りて小論文対策などを行ったり、教師の意向に沿った選書をしたりと教育といった面でも積極的なほうだと思います。
ただすべても学校図書館がそういった活動をしているわけではないし、そういった活動が学校図書館の役割かどうかも意見が分かれることでしょう。また、これらは司書一人の努力ではなく他の先生方の理解も必要です。
  
私は学校図書館にもあまり詳しくないので何も言えませんが、学校図書館が学校という教育の環境の中ではたすべき役割を一律に定めたり、学校司書の水準を最低限は統一できるといいのになーと思いました。
あと学校の図書情報部で学校で行う講演会や視聴覚関係を一括で管理するそうなのですが、そういった事業を拡大して、学校における教科別の教育以外の総合分野的なことも図書館が担えるようになればいいのになーとか思いました。まる。*4
  
あ、あと司書教諭の講習などで古い本はどんどん捨てろと教えられるらしいですけど、もったいないから学校でフリマとかして無料配布というのは備品という都合上難しいのですかねー?

*1:そればっかりだったわけじゃないけど、そういう方針だったということで

*2:とかいいつつ先生も生徒には甘いのでそれなりのわがままは聞いてもらってました。ありがとう先生ー

*3:教師が十何種類作った読書のコース(三冊程度)の中から生徒に選ばせて読書をさせる仕組み。先生が作った。個人的には、普段読書をしない人が気軽に本を読めるきっかけになったりと効果的だと思ってたけど、残念ながら他の教師の反対から廃止されるかもしれないらしい

*4:すっかり感想文的な終わり方になってしまった