若きライブラリアンの海外大学図書館研修レポ

国立大学図書館協会主催のシンポジウムに行ってきました。

結論から言うと、とても楽しかったです。海外図書館は大好物なのでおいしくいただかせていただきました。
隣にいた友達はまだ早いとか言ってましたが…早いかなあ。すごい楽しかったのになー

内容整理のためにもちょこちょこっとまとめてみたいと思います



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イリノイ大学モーテンソンセンターにおける大学図書館マーケティングについて

まず初めに、マーケティングとは、顧客との相互理解を得ながら市場創造するための総合的活動のことを指します。
(営利・非営利は関係ないらしいです。マーケティングという言葉にも初めて触れたので、これは少し驚きました。)

では、大学図書館におけるマーケティングとは具体的に何なのでしょうか。
営利目的の企業では、直接的に行って顧客のニーズを知り、それに応えた商品やサービスを提供して利益を得ることです。
大学図書館は非営利ですから、利益を得ることはありません。しかし、今後法人化された後、図書館にとって利益や資金に直結するのが、顧客の満足度だと思われます。
顧客とは図書館の利用者です。利用者が満足し、どんどん図書館を利用すればするほど、大学図書館は良い評価を得るわけです。


大学図書館におけるマーケティング、これにおいて、パネリストの方が何度も強調しておられたのが、顧客との相互理解、つまり利用者とコミュニケーションをとることです。


コミュニケーションをとるということは、利用者と”情報”を流通させ、理解し合うことです。
そのために図書館は利用者に向けて情報を発信し、また利用者からも発信してもらい、相互にそれを受け入れなければなりません。
それを実現するためには、利用者との快適な関係が必須です。

 大学図書館にとってマーケティングとは、顧客満足度を高めることでも、資金を調達することでもない。それはいずれもマーケティングの結果として出現するもので、本来のマーケティングとは、大学図書館と顧客との間で、大学図書館のミッションに対する相互理解を深めるためにコミュニケーションをはかっていくことである。そして、その相互理解を深めるためにいかなる方法をとるか考え実行することが、戦略的マーケティングということになる。
             シンポジウム予稿より引用

ちなみに大学図書館におけるマーケティング戦略は、1、コミュニケーション基盤を確立させること 2、情報を公開すること 3、図書館を評価してもらうこと
この3点だそうです。


  • バーチャルリファレンス

利用者との関係を快適にするためにそのいち。


バーチャルリファレンスとは、インスタントメッセージなどを利用してチャット形式でライブラリアンにリファレンスしてもらうシステムのことです。
館内や館外のパソコンから、図書館にアクセスしてチャットでライブラリアンに質問するわけです。
チャット形式ですから、メールや時間を置くリファレンスとは違い、完璧・正確な情報ではなくとも、リアルタイムで即座に応答してもらえます。
バーチャルリファレンスには、開館時間のみの対応と、24時間いつでも対応してもらえるものの2タイプあります。
開館時間のみの場合は、カウンター勤務のライブラリアンが業務の片手間に対応し、24時間の場合は協力関係にある大学のライブラリアンでシフト制を組んで対応しているそうです。
このバーチャルリファレンスに関し、パネリストの方は24時間対応の方が便利そうに見えるが、実際利用してみると開館時間のみの方が利用しやすいと述べていました。
地域にかかわりのないライブラリアンに聞くよりかは、24時間対応でなくともその地域について知識のあるライブラリアンに尋ねる方がより良い答えを得ることが出来るから、だそうです。


(私はバーチャルリファレンスの存在をこれで初めて知りました。アメリカではずいぶん普及し、日本では話題になったことがあってもまだ広まってはいないそうです)



  • ニュースレター

図書館との快適な関係を目指してそのに。


イリノイ大学のモーテンソンセンター(パネリストの研修先)では、Library Friendという制度があります。
Library Friendとは金額に制限はなく、また使用目的を寄付する側から指定することも出来る(例・あの本をこの寄付金でかってくれ、など)寄付金制度です。図書館に寄付をした人をLibrary Friendといいます。モーテンソンセンターはこのLibrary Friendに年4回のニュースレターや年次報告書を送付しているそうです。
ニュースレターには、Library Friendから得た寄付金をどのような目的に使用したか、どんな人がLibrary Friendになったか、等が記事になっています。
このニュースレターはとても良い紙を使用しており、そこらへんのチラシや新聞などとは格が違うとのことでした。
また年次報告書は、美麗なイラストやデザインでまるで絵本のように見える冊子に仕上がっており、寄付金の使用目的のほかに年額100ドル以上を寄付した方の名前を全員分掲載しているそうです。


  • その他−徹底した情報公開

モンテーソンセンターではHP上で、大学図書館のミッション(最終目的)を、利用者が分かりやすいように、柔らかく繰り返して、対象や理念を明示しています。
また全ライブラリアンの情報(誰がどの部門に所属し、どんな仕事をしているか)が開示され、業務や部門が、誰にでも分かりやすいように説明されています。
HPでは他にもあらゆる情報が掲示してあり、そのどれもが利用者の視点からの文章で説明してあるのです。


パネリストの方は、最後までコミュニケーションの重要性を主張していました。
コミュニケーションの改善は、単純で現場で働く図書館員がすぐ出来ることだけど、意外とそれは上手くいかないし普及しないのだそうです。
利用者が要求しないサービスを提供することもあるだろうが、それを利用者に押し付けて無理に評価を得ようとするのはいけない、ともおっしゃっていました。利用者とも、また職場の同僚とも、正確で間違いのない情報を得たり与えたりするだけでなく、正確でなくともフランクに、どんな情報でもやり取りするのがいい。そのおうなことをおっしゃていたような気がします。





一つ目の講演を聞いての、私なりの理解・見解でした。
何分知識もないし学力も能力もないので間違っていたらすみません。知らせてくれればすぐに修正します。







…さて、この調子で残り2つの講演も書こうと思ったのですが、さすがに力尽きました。
また次にしたいと思います。



本当に面白くためになった講演でした。皆勤賞を逃してでも価値は充分あったと思います。
ただ残念なのは、パネリストの方や他の誰とも話せなかったことでしょうか。パネリストの方に聞いてみたいことがあったのですが…4000円あったら半月分の食費がまかなえるんですよ。仕方ない。