第2回図書館系勉強会の記録「図書館法について:明治初期からみる図書館法」

筑波大学の隅っこで第2回図書館系勉強会を開催したので、その記録を公開します。勉強会についてはこちらをご覧ください。

なお、前回と同様に今回の記録及び勉強会の内容は、個人の主観的内容であり、自分の理解した範囲のみでの記述になります。さらに今回は自分の発表分ですが、解釈の違い、転載ミスなどから内容が間違っている恐れもあります。その点あらかじめご了承いただき、ご覧ください。

  

発表の記録

  

発表の動機
  • 意外と図書館法について勉强する機会がない
    • 以前は「図書館概論」という授業があったが、学類改組と同時になくなってしまった
    • 今(知識情報・図書館学類)では授業で詳しく学ばない
  • しかし、図書館に関わる以上その内容及び理念を理解すべきではないか
    • なぜならば、最近起こる公共図書館に関する問題、例えば図書館同種施設についても、図書館法制定時の理念が関係している
  • 図書館法の理念を理解するには、図書館法制定以前から追う必要がある

  

日本における公共図書館初期
  • 1879(明治12)年9月29日教育令発布
    • 第一条に書籍館の規定:設置、廃止など許認可権についての規定
    • 明治19年教育令廃止、諸学校通則などで規定
    • 明治23年小学校令:初めて法律上で「図書館」の語が使われる
      • 以後「書籍館」は全て「図書館」といわれるように
  • 1899(明治32)年11月11日図書館令公布
    • この図書館令の発布により、従来の図書館に関する規定は廃止された

  

図書館令
  • 許認可権
    • 初め設置廃止など認可は全て文部卿であり、職員の任命は地方長官であった。その後変遷を経る
      • 図書館令では図書館(書籍館)設置の許認可権が重要な懸案事項であり、度々改正された。私立図書館は最初は設置報告で良かったが、後々設置に認可が必要になる。
  • 職員
    • 1906(明治39)年改正:法令上「司書」を初めて規定
    • 1921(大正10)年:公立図書館職員令
  • 1933(昭和8)年改正
    • この昭和8年の改正は今後の図書館に最も影響を与えた改正
    • 中央図書館制度の設立
    • 公立図書館職員令:公立図書館司書検定試験を規定
      • 受験科目なども細かく規定していた

  

戦後日本
  • 1947(昭和22)年 日本国憲法の発布
    • 図書館令など、それまでの命令を廃止
      • 公立図書館職員令は昭和21年に大幅な改正がされており、実質的にそれまでの効力のほとんどがなくなっていた
  • 1950(昭和25)年4月 図書館法制定
    • 日本国憲法の発布から図書館法の制定に3年もの間があいたのは、戦時中の思想統制機関として働いた図書館への抵抗が残っていたためともいわれる
    • 図書館法成立に関して詳しいのが、文部大臣の「図書館法提案について」と西崎社会教育局長による「図書館法案について」という文献

  

文部大臣「図書館法提案について」
  • 図書館法の内容について述べている
    • 国民に奉仕すべき機関としての図書館の性格を規定
    • 図書館職員養成の制度の確立
    • 国庫補助の規定
    • 私立図書館に不当な統制干渉を及ぼさないように規定

  

西崎社会教育局長「図書館法案について」
  • 図書館法制定時の意向や条文の内容について詳しく解説している
    • 図書館法は図書館の設置及び運営に必要な事項を定める
    • なぜ社会教育法に図書館法が組み込まれなかったのか?
      • 社会教育法に組み込まれるものであったが、別途検討すべき課題が多かったので単独法とした
    • なぜ法律で図書館の義務設置を規定しなかったのか?
      • 地方財政に過大な負荷はかけられず、また義務教育の充実に努力すべき段階であるので、図書館を義務設置にはしなかった
    • 図書館法上の図書館と個人の設置する図書館の違い
      • 個人の設置する図書館は図書館同種施設とする
      • 図書館同種施設は個人による設置などその継続性に疑問があるものを対象にしている
      • つまり、近年問題となっている首長部局が管理する地方自治体の図書館は、図書館法制定時は図書館同種施設として想定されていなかった
    • なぜ図書館は学校などとは異なり、名称独占(他の組織、個人がどの名称を使用してはいけないこと)ではないのか?
      • 「学校」という名前は詐欺などの誤解の恐れがあるが、「図書館」という名称は第3者が用いても不利益がないため
      • この規定があるため、「図書館カフェ」などが存在しても問題ない
    • なぜ「公共図書館法」ではなく「図書館法」なのか?
      • 公共図書館」は学校図書館などと区別されて、”一般の国民が利用する図書館”という意味
      • 社会通念としても図書館は公共性を持ち、それを尊重するために図書館法とした
    • 図書館の目的として、新たに「レクリエーション」が追加されたことに対して
      • レクリエーション:適当な音楽、スポーツ等を楽しみ、平易で高尚な音楽、芸術等を楽しんで、今日の疲労を癒して再び明日の人生を創造する。京楽ではない
      • 無料貸本屋」など非難されることがあるが、公共図書館で小説などレクリエーションの目的で図書を貸し出すことは法律上そのように意図されている

  

図書館法にまつわる話題
  • 図書館法が制定されて以降、図書館界でどのようなことが話題になっていたか
    • 1940年代 図書館法制定過程における議論
    • 1950年代 図書館法改正問題
      • 図書館の義務設置など、図書館法に含まれず不満だった内容を求めて図書館法改正運動があった
    • 1970年代 社会教育法への図書館法統合問題
    • 1980年代 図書館事業基本法問題

これらの話題は全て、「国家統制と地方自治原則をめぐっての議論」と「図書館と社会教育の関係に関わる議論」の2点からなっている。

  

これまでの図書館法改正

1980年代後半から、それまでほとんど改正されなかった図書館法が何度も頻繁に改正されるようになる。その改正内容も、地方主権または社会教育に関する観点からの改正である。

  • 1986(昭和60)年図書館法改正
    • 地方公共団体の事務に係る国の関与等の整理、合理化等に関する法律が成立したことによる改正
    • 公立図書館の設置廃止及び設置者の変更に係る都道府県教育委員会の文部大臣に対する報告の廃止
  • 1999(平成11)年図書館法改正
    • 地方分権一括法による改正
    • 国庫補助の最低基準の廃止
    • 館長の資格規定の削除
    • 図書館協議会の選定基準の大綱化
      • この図書館法改正は図書館界で大きな議論を呼んだ
  • 2008(平成20)年図書館法改正
    • 社会教育法等の一部を改正する法律制定による改正
    • 教育基本法改正を踏まえた規定整備。「家庭教育の向上 に資する」 など
    • 「図書館の設置及び運営上望ましい基準」を文部科学大 臣が定め、公表する条文の追加
    • 第5条1項1号及び2号の順序を変え、司書資格の講習より も大学での取得 を優位とする
    • 図書館資料の収集対象に「電磁的記録」を明文化
  • (2009年図書館法施行規則改正)
    • 司書資格取得単位数の増加

以上のように、1980年代後半からの図書館法改正は、地方主権拡大かもしくは社会教育関連のものである。図書館法制定以来の議論からみても、この2つが図書館法に大きく関わっているのは間違いなく、今後もどのように図書館法が改正されていくのか興味深い。

  

  

おわりに

初めて、勉強会のように調べたことを人前で発表する形式にチャレンジしてみました。本などを読んで理解した気になっていても、実際他人に話して聞かせようとすると意外と理解していなかったり覚え間違ったりしていて、なかなか上手くいきません。題材が図書館法という奥の深いもので生半可にもいかず、もっと時間をかけて詳しく調べられれば良かったと後悔してしまいました。こういう機会を活かして、次もしっかり勉強したいと思います。

さて、次回は第3回図書館系勉強会として、2011年10月14日(金)に「山中湖情報創造館レポート:図書館ブランディングの観点から」というタイトルで発表して頂きます。お時間のある方は、ぜひぜひラーニングコモンズまでお越しください♪
ではでは