第1回 図書館系勉強会の記録「日本における図書館員の研修状況」

筑波大学の隅っこで図書館系の勉強会を開催しました!その記録を公開します。勉強会についてはこちらを御覧ください。

なお、今回の記録及び勉強会の内容は、個人の主観的内容であり、自分の理解した範囲のみでの記述になりますので、あらかじめご了承ください。それでもよろしければ、どうぞ!
  

当日のスライド

  

発表の記録

研究の動機
  • 図書館員の専門性って何だろう?
    • 現場で働いている人は経験や知識もあるが、それは専門性といえるのか?
    • 司書資格は、専門性の担保といえるかはわからないが、一種の指標ではある
  • 現場に行った友達の話
    • 図書館について全く勉強したことのない人も一緒に働いている
    • そういう人も2,3年働けば一緒だよと言われる…自分が勉強してきたものは何だったんだろう?
  • 技能を向上させるには研修など継続教育が必要ではないか
    • 正規だけでなく、非正規など雇用形態なども様々
    • アメリカと違い、日本はゼネラリスト。様々な仕事に携わる
  • 研修に関しても、包括性と統括性を兼ね揃えたプログラムが必要!

  

研修状況
  • Q.2010年に行われた日本における図書館関係の研修、シンポジウム、研究会の数は?
    • 1. 200、2. 380、3. 750、4. 1060のうちどれだろう?
  • 正解は…1060(1068)!
    • 一日に3つあるペース。これは非常に多いのではないか
  • 主な研修(スライド参照)
  • 一言に研修といっても、館種や勤務歴など様々なものがあるし、継続のもの、全国規模から館内研修まで非常に様々なタイプの研修が実施されている

  

大学、公共、専門図書館で継続的に行われている研修を紹介する
  • NII学術ポータル担当者研修
    • 全国規模(2会場)で知名度も高い
  • 大学図書館員長期研修
    • 文科省と筑波大の共催で、運営費・宿泊費は文科省の運営交付金
    • 国のもっとも中核的な総合研修
    • 2週間(4週間)
    • 受講経験は大学図書館員のステータスとなるくらい、業界では有名
    • 期間も長いので、受講者同士のネットワークもできる
  • 中堅職員ステップアップ研修
    • 経験年数に合わせて2つの研修がある(勤務年数3年/7年ー)
    • 理論よりも実践を重視したマネジメント中心
    • 私費
    • 図書館司書専門講座と関連(研修2を受ける条件として認められる)

  

日本の研修の概観
  • 研修の数、実施している機関が多い
  • 研修館の連携はあまりない
  • 研修が受講者の所属館、図書館界全体のレベルアップにつながっているか?
    • 研修の効果を認めてもらえないケースもある?
  • 手先のハウツー、実践的な内容ばかりに偏っていないか?
    • 一般論として基本的な部分を軽視していないか?
  • 継続的なテーマ設定は難しい
    • 日常との業務の兼ね合いにより、長期の研修は難しい

  

海外の事例(アメリカ)
  • 一般的に図書館先進国といわれる
    • 日本と比べて、図書館職員の専門性が高い、ある程度確立されているといわれる
  • アメリカでは、研修と言うよりも「継続教育」という文脈で語られる
  • ALAの下部組織で実施されているものが多い
    • 公共図書館部門、大学図書館部門etc…
    • ALA認定校でも現職向けのプログラムがある
      • 「情報専門職における予算獲得のための書類作成」ためになりそう!
    • e-Learningの実施も盛ん
  • アメリカでは、図書館利用者に対してもきめ細かい継続教育のプログラムを提供している
    • 情報専門職に向けたものもその一部
  • ALAによるサポート体制の確率が重要。良い意味で、専門性の確立との相互作用がある

  

日本の研修の課題

  • 研修を統括する団体または委員会などが必要ではないか
    • より包括性、統括性のある継続的プログラムをつくる必要がある
    • 研修による認定制度の整備
  • 個々人のキャリアアップをよりサポートできるようなe-Learningの整備も必要
  • 図書館員に求められる技能とは何だろう?
    • 最近は汎用的能力が話題。社会人に求められるような企画力なども、図書館員に必要なのではないか
      • 専門性があるからこそ、基礎的な能力を
  • LIPER報告書
    • 情報専門職についての研究だが、あんまり有名ではない
    • 図書館員に求められる技能を考える上では必読
  • コア・コンピタンス
    • 永田先生が研究されてらっしゃっていた

  

質疑応答

  • Q. 図書館職員が移転などでころころ変わっている図書館では、職員の人は研修に参加できないのか?
    • A. 最近は、非正規職員でも研修に参加しているひともいる。勤務歴や正規職員の縛りがある研修には参加できないが、小規模・中規模な研修に行っているのでは。
    • 非正規職員が積極的に研修に行っても待遇に反映されなければ、それこそ専門性とは何だったのかという話になるのでは
    • TRCは研修などを受けると時給が少し上がるらしい
  • ALAはしっかりしている、IFLAにもラウンドテーブルがあるらしい
    • e-Learningもしっかりしている
    • アメリカではe-governmentなど、電子的なものが流行っている
    • ALAの資金源はどうなっているのか…
  • Q. 図書館職員の研究として、どういう方向性を考えているのか?
    • A. とりあえず現状把握。現状を把握した上で傾向などを指摘できれば
    • 文科省の図書館関係予算でも、研修に関する費用は長期的に結構な額をとっている。その成果がどうなっているのか疑問
    • 講演の回数は多い。そしてうちの先生たちも多い
    • やっぱり筑波大はメッカなのかも

(以下雑談)

    • LIPERの知名度低いのはなんでだろうね
    • 図書館の現場の人にはなかなか届きにくい
    • 図書館雑誌なら読んでいるのだろうか。図書館雑誌ですら、どれくらいの人が読んでいるのかわからない
    • そもそも全員研修を受ける必要があるのか?
    • 普段会う人はすごく意識が高い人。そうじゃない人はたくさんいる

  
  

初めて図書館系の勉強会を開催したのですが、一時間みっちり図書館について勉強したり話すのが新鮮で、とても楽しめました。これが第一回なのですが、できれば今後も続けていきたいと思います。
次回は10月7日(金)に筑波大学春日キャンパスラーニングコモンズで「図書館法について」やります。お時間のある方はぜひぜひどうぞー