図書館法改正を伴う法案が衆議院通過した件について


2011年8月11日の衆議院本会議について、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」案が賛成多数で可決されました。
この「地域の自主性及び…法律」は、法律として施行された場合、同時に図書館法が改正されることが明記されています。

そのことについて以下にまとめてみました。

衆議院本会議録

まず、「地域の自主性及び…法律」が可決された衆議院の記録です。

衆議院の会議録はこちらから御覧いただけます。(Webサイトの構成上、直接議事録へのリンクが貼れないのです)

  

2011年8月11日衆議院本会議(第177回第38号)

まず、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、地域の自主性及び自立性を高めるための改革を総合的に推進するため、都道府県の権限の市町村への移譲を行うとともに、地方公共団体に対する義務づけを規定している関連法律を改正する等の所要の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る二日本委員会に付託され、同日片山国務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。次いで、九日及び本日質疑を行い、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。*1

○議長(横路孝弘君) これより採決に入ります。
 まず、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

  

地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律の内容

「地域の自主性及び…法律」は以下で見ることができます。


この「地域の自主性及び…法律」の第十八条に、図書館法改正について定められています。

(図書館法の一部改正)
第十八条 図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)の一部を次のように改正する。
  第十五条中「学校教育及び社会教育の関係者、家庭教育の向上に資する活動を行う者並びに学識経験のある者の中から、」を「当該図書館を設置する地方公共団体の」に改める。
  第十六条中「定数、任期その他」を「任命の基準、定数及び任期その他図書館協議会に関し」に改め、同条に後段として次のように加える。
   この場合において、委員の任命の基準については、文部科学省令で定める基準を参酌するものとする。

  

図書館法改正で何が変わるのか

「地域の自主性及び自立性を高めるための」という名前の通り、この法律は地域主権を進めるための法律です。
ですので、今回の図書館法改正は今までよりも図書館の制度の決定において地方自治体の権限が強化されるという内容のものになっています。
具体的にどういう影響があるのか以下でみてみましょう。まず改正後の図書館法第十五条です。(下線部が変更部分です)
  

<図書館法第十五条(改正後)>
第十五条 図書館協議会の委員は、当該図書館を設置する地方公共団体教育委員会が任命する。

第十五条は図書館協議会委員の任命に関して、「学校教育及び社会教育の関係者、家庭教育の向上に資する活動を行う者並びに学識経験のある者の中から、」という制限を削除し、地方公共団体教育委員会の任命によれば誰でも協議会委員に任命できるようになりました。
    

<図書館法第十六条(改正後)>
第十六条 図書館協議会の設置、その委員の任命の基準、定数及び任期その他図書館協議会に関し必要な事項については、当該図書館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない。

第十六条は同じく図書館協議会の委員について、「定数、任期その他」となっていた文言を削除し、「任命の基準、…その他図書館協議会」とより詳細に定義することで、地方公共団体の裁量で図書館協議会についてより自由に決定することができるようになりました。
  

図書館法改正の影響

以上で見たように、今回の図書館法改正はどちらも図書館協議会に関わるものでした。
ここからは個人の意見ですが、おそらく今回の図書館法改正には地域主権の流れから、図書館協議会も地域の地方公共団体、住民の意向に任し、効果的に活用して欲しいという意図があるのでしょう。
しかし、いきなり「図書館協議会の自由度を高めるから有効に使ってね」と渡されても、「はいそうですか」と対応できるようなノウハウが地方自治体にあるのでしょうか?
    
また、日本の各地方自治体で図書協議会はどのように条例で定義され、どのような活動を行っているのか。そういったデータは集められ、研究は行われているのでしょうか?
  
実際行われているかどうか自分は分からないので、これから調べてみようと思うのですが^^;
これから地域主権の流れが大きくなる中で、公共図書館の運営に貢献できるような公共図書館の研究がなされていけば、かねてから指摘される学問と現場との溝が埋められていくのではないかなと思います。

*1:総務委員会の記録をみたのですが、本案の討議に際し特に図書館に関する議論はなされていなかったので割愛しました。