L-1グランプリ 第1部・第3部の記録
図書館総合展2日目、今日はL-1グランプリが開催されました。
L-1グランプリ2010−若手ライブラリアンのためのワークショップ式登竜門
日時:2010年11月25日(木)10:30〜17:00
場所:第12回図書館総合展会場(パシフィコ横浜)L-1グランプリとは何か?
20代から30代のライブラリアンを中心に、ワークショップ形式で、それぞれの抱く図書館像を検討・発表していただきます。この経験を通して、今後、図書館業界で活動していく上で欠かせないリーダーシップやファシリテーション、アジェンダ設定やビジョン提示、パブリックスピーキングの能力と経験を養うことを目指します。賞金総額は100万円!
あなたが理想とする図書館像を描き出して、賞金を獲得してください!
全3部構成で、第1部・第3部とも参加(第2部は非公開)したので、その記録です。
もはや記録とも呼べない個人のメモなので、読む価値すらないかもしれません。ないです。
L-1は会場で見ている人の間でも見方や聞き取った内容は大きく異なるだろうし、そうじゃない人はなおさらそう。
人によって抱く印象が違うものを、個人が書きとっただけという点を、いつもよりさらに強調します。
それでも大丈夫、という方だけお読みください。
昨日と同様、速報なので誤字脱字間違いなどあるかと思いますが、ご理解いただきますようお願いいたします。
(第3部Lieの原稿などが公開されるそうなので、その後また補足したいと思います)
最初の挨拶
- 図書館総合展常務理事
- 今、図書館が抱えている問題は、人的なネットワークをつくることで、解決できる
- 登壇者だけでなく、会場に来ている人みんなで行いたい
チーム紹介
お題「抜擢人事で館長になったとき−次代に示すビジョンとプラン」
- あなたは抜擢人事で図書館長に就任することになりました。明日は就任初日です。
- 20分間、自分のチームで相談するのではなく、他のチーム、観覧の人たちに、どうするか意見を聞いてください
- そのあと、自分のチームたちで相談、3分間の発表をしていただきます
- 発表には情報機器の使用は不可能です
- インタビュー時間(20分間)
- 会場内や、ライフラインを使って続々とインタビュー
- チーム討議(20分間)
- 話し合ったり、文房具を利用したり…
発表
- 各チーム3分間
- 石けんブラザーズ
- 明日から国立国会図書館長になります
- 図書館を編集する
- コンテンツそのものを編集する
- 人。司書さんだけでは駄目。外から人材を集めてくる
- 環境。人を集めていきたい。利用者、市民。実践できる場をつくる
- 従来の建物の中で、
- コンテンツの編集、人の編集、環境の編集。
- Actualize L-1チーム
- 吉井さん
- これからつくるもの。準備室長
- テーマは、図書館は、人と建物と資料。
- 3つ考えました
- 1.ゲームをする日
- ゲームをする日を作って、図書館に人を集める。今まで来なかった人たちを集める
- 本を手に取ってもらうための仕掛け
- 2.スタッフの貸出
- 図書館員の能力を、顔写真付きで掲示
- 利用者とスタッフの間の壁を取り払う
- 3.カードの中に名前、特技を書いてもらう
- 利用者カードを自分の紹介に
- カードを通じて、趣味語学などのレファレンスを積極的にできるように
- Lie
- KIBIDAN5
- 郷土愛を高める図書館
- 会場の人に岡山に着いたら、きびだんごや桃などのイメージしかない
- ここにきたのは、楽しい岡山をPRするため
- 地域の図書館は、予算獲得に苦労している
- 自分たちの故郷をもっと愛せるようになる図書館づくりを考えてほしい
- 酔いどれ西遊記
- 抜擢人事→何か問題がある
- 任期は3年。炎上したら?
- 地方の図書館を、私がいなくなっても強靭な組織として維持させ続けるにはどうしたら良いか?
- まず、地域と連携を図る。地域の運動会に参加する、飲み会に飲めなくても行く
- 上と下が繋がっていない。できない抜擢人事の館長は、下のことを分かっていない
- 具体的なプランは定まっていない
- 地方の人たちとコミュニケーションを図る
- キーワードは「ラストワンマインド」
- これは、後々つなげていく
- Liforms
- 岡野さん
- 初めまして、館長です
- プロデューサー的な仕事をしたい
- みなさんの働きやすい職場を作る
- もっと、皆さんのことを知りたいし、勉強しなければいけない
- 毎日変化することを知っている
- 皆さんも、変化していくことを忘れないでほしい
- みなさんと、私たちの組織はコラボレーションをしていく
- 社会人はどこで働いているか、地域に根差した図書館をつくっていきたい
- りぶやん
- Twitterで意見を言ってほしい
- 中小図書館。抜擢なので館長は中のことを知っている
- ビジョン。「外とつながる図書館」
- 地域や、大学や、他のものとたくさん繋がっていきたい
- 学生として、図書館に何を求めるか?
- カウンターでは、ホスピタリティを持って、笑顔で接してほしい
- 観覧者が各自良いと思ったグループに投票して、第1部は終了
第1部終了
- 第2部は自由行動
- 15:00にチームは集合、第3部の説明を行う
- 最終プレゼンテーションは8分間。質疑も
- 15:30開始
第3部
- 第1部の開票
- 1位:Lie(22票)
- 2位:石けん、リフォームズ(同票17票)
- 4位:酔いどれ西遊記(14票)
第3部の発表
- お題は第1部と同じく、「抜擢人事で館長になったとき−次代に示すビジョンとプラン」
- 審査方法
- 審査員1人(全5名)に20万円が割り当てられている
- 一度、発表を聞いて20万円を与えたいチームの前に置く
- その後、アドバイザーの方の講評を聞き、気が変わったら、移動してもらう
- 与えられた20万円は、その20万円を投資として与えたいということ
Lie
- 今から20年前、不運の死を遂げた小野社長
- 故人の遺志を継いで、当時の仲間だった常川氏が新しい図書館の館長に抜擢されました
- 常川館長の講演
- 私たちしずく図書館に夢を注入するのは、利用者
- 私たちは、その夢をかなえるためのエンジンを作りだしていきたい
- それを、一人で背負うわけではない
- たくさんの人の助けを借りて、事業を進めていく
- 私の元に、真に必要とされるもの、欲しいものを持ってきてください
- そして、それが本当に必要とされているのだということを実証してください
- それが本当に必要ならば、それを実現するための資金や環境は必ず、入手する方法がある
- ここに、図書館のあるべき未来を知っている人は、誰もいません
- しかし、未来を実現するための手足は、誰でも持っています
- 未来を探すために、皆さんと一緒に歩んでいきたいと思います
酔いどれ西遊記
- 図書館協議会委員を2年勤め、新人館長に抜擢されました
- キーワード:貫知と連知、ラストワンマイル(9割をフォローした後の1割をどうするのか?)
- 館長就任のあいさつ
- ミッション:連なる知の強化
- 具体案:大学との連携、MLA連携…
- 連知と貫知からこぼれおちるもの:家庭
- ラストワンマイルで社会と家庭をつなぐ
- まだ図書館を利用していない人:公共圏につながっていない人
- 切り込み隊長として、社会につながっていきたい
- みんなで図書館を作っていきたい
- 一生懸命に頑張りたいと思ってるけど、突っ走ることもある
- だから、皆さんと協力していきたい
Actualize L1
- 現状を打開するためのビジョン
- :人だまりのできる図書館
- 子どもたち対象のゲーム
- カルタ(文化的な遊び)
- 図書館員の指名
- スタッフの気づき、声かけ
- 利用者を繋げる図書カード
- 利用者の趣味等の情報を図書カードに
- 自己PRのための掲示板
- 子どもたち対象のゲーム
- →人だまりのできる空間として、図書館は生まれ変わることができるんじゃないか
リフォームズ
- 3つの柱、それぞれに3つずつ具体策を上げて、9項目示す
- 地域コミュニティづくり
- しゃべり場をつくる
- デジタル×リアルの展示空間
- つながり支援
- 資料のデジタル
- 書籍の電子化
- コミュニティの利用ツール
- 組織
- まず外に出てみよう
- 何かを実行・実現しよう
- お互いに情報交換を行い、協力体制を築いていく
- 人と人とのツナガリ
- 新しい出会いから新しいサービスができる
- モデルケースとして、Lifoがある
- Lifo
- 若手の図書館員の部活動
- デジタル機器を利用した情報交換活動
- 大人になっても遠足ができる!
- 組織内のチーム活動
- 組織間の交流が始まった
- Lifokumo
- kulibrarian
- いろんな出会いの機会を活用しよう
- 外に出てみないと始まらない
- そのためのツールは、もう私たちの周りに出てきている
- もっともっと、人と会いましょう
- 人と会うことは、組織のためではなく、自分の成長になる
石けんブラザーズ
KIBIDAN5
- ふるさとを愛する皆さん、こんにちは
- コンセプト:郷土ラブ
- 地域の人たちがより良い暮らしをしていくための活性化
- 岡山の地域の活性化・魅力を外部に発信する
- 資料の収集
- 地域で様々な情報を発信しているものを収集・提供
- けんみんブログ
- 資料の整理
- きびだんご本棚
- 図書館の中にビギナーズルームを作成
- 観光地に出張って本を提供
- アウトドアとインドアを合併して提供する
- きびだんご本棚
- 他にも、地元の企業とタイアップなど
- ゆっくりとくつろぎたいという人に、出張して本を提供
- 具体的な予算についての言及
- 地域図書館ファンド
りぶやん
- 現状:いろいろ
- 内部あがりの図書館長
- いろんな方策を提示
- 図書館長:図書館のスポークスマン
- 図書館はPRの下手な人がとても多い
- 学生と外とつながる
- カウンターに立つときは大きな声であいさつ、笑顔
- 利用者の話を聞く
- 研修には積極的に行ってください!
- お金は外部の助成金などをとってきます
- 情報活用社会をつくりたい
- Q.抵抗勢力が多かったら?
- A.館長が率先して行えば、職員は変わってくれるのではないか
仮審査・各審査員の講評(1分)
- 仮審査の結果
- 石けんブラザーズ(2票)
- リフォームズ(1票)
- Actualize L1(1票)
- 酔いどれ西遊記(1票)
- 伊勢さん(映画監督)
- 個とか、私とかの現実感がない
- 組織がどうなっても、人は変わらないと思う
- 石けんブラザーズは…(容赦なく銅鑼の音)
- くすのきさん(小説家)
- 私の経験として、抜擢館長になったことはある
- 抜擢人事ということは、何が求められるのか?
- 抜擢されたということは、抜擢されなかった人がいる
- 職員の夢、などが語られているか
- 小木さん(丸善社長)
- 館長はリーダーである
- 「こいつにまかせたい、ついていきたい」と思う人
- 自分の言葉で語っているか
- 当事者意識があるか
- という点で、圧倒的に酔いどれ
- 橋本さん
- 抵抗組織が多いかは、ベンチャーと同じ
- 小さな面白いことをやって、メディアやコミュニティを巻き込む
- 組織の垣根を飛び越えて、リコールされてもいいけど大きいことをやる
- 香月さん
- ミッションやプランが実現できるか、可能か
- と思うと、石けんやActualize
- Actualizeに二十万円使ってプランを実現してほしい
- プランの発信場所として図書館を使ってほしい
- 各審査員の公表が終わり、アドバイザーの宇陀先生(筑波大学)のお話し
アドバイザーの講評(5分)
- 宇陀先生
- 図書館をいかに逸脱してくれるか
- 勝負事なので、いかにプレゼンを魅せてくれるか
- いかに審査員を説得してくれるか、を期待していた
- 正直がっかり。ビジョンでもないし、図書館の本質を抑えていない
- 以下各チームの講評
- 石けんぶらざーず
- 午前中は編集。午後は拡散する知のアクセス
- アイデアが拡散しているのではないか?
- 大事な人材や予算は言及されていない
- Actualize
- スタッフの話は面白いが、午後も同じ話。
- 「ありきたり」と自分で言ったらおしまい
- Lie
- 「エンジンを提供する」面白いが、そこで止まってしまった
- きびだんご
- 分る。が、抽象化してほしかった
- あんたらは岡山だが、他の人は違うんだ
- 酔いどれ
- しっかりしていたが、抽象的すぎた
- りふぉーむ
- 資料のデジタル化:ありきたり、つまらない
- りぶやん
- スポークスなどがあったが、それがどうした、ということ
感想
チームとして参加した皆さん、そしてL-1グランプリを運営された皆さん、お疲れさまでした。
そしてグランプリを獲得された石けんブラザーズの方、おめでとうございます。
以下、記録でも何でもなく、個人の感想(のメモ)になります。
批判的ですので、記録だけでいいよと言う方はここまでにしておいてください。
- 「見た目」の話
人前に立つのってエンターテイメントだと思うのです。壇上に上がって人前に立つ、あえてそれをするというのは、個を滅して「人に見られている自分」になることだと思うのです。
だから発表はエンターテイメントだと思うし、舞台上の人たちの服装がそろいもそろってモノクロだった(ほぼ全員)っていうのは、「なんで?」と思ってしまう。
だってテレビを見たって、全員モノクロの衣装着て出ることってないでしょう。どんなにつまんない三流芸人が出てても、「面白くなくて申し訳ないんですけど…」なんて言わないでしょう。でもそれは、思っていないわけではない。
と、まあ、見ているだけの人間だからこそ言えることです。
- 求められている「若さ」とは何か?
自分にとっては「若い」というのは10代や20代の人たち。でも、図書館員の人にとっては、もしかしたら30代やそこらの人が「若い」といわれているのかもしれない。と思いました。
なぜなら、審査員に評価された方のプレゼンでの「若さ」がよく分からなかったからです。
若い人は、もちろん完璧なビジョンは示せません。具体策も提示できません。不完全ながらも、熱い思いを持っている、そんなイメージでした。でも、この会場では「若さ」は求められていない、もしくは、みんなの言う「若さ」が自分の感性とはずれているものなのかもしれない。「君たちまだまだ若いね」って言われるのは、正しいけど、それが欲しくてやってるんじゃないのかなと思いましたけど…*1
- 「若手」のためのワークショップなのに、審査員は若くない。そして図書館関係者でもない
これも、感性などの点で。また、図書館に詳しくない人たちばかりでしたので、一般受けする話、もしくは図書館情報学的に詳しくない話が受けるのかなと思いました。Twitterでも指摘されていましたが、挙げられていたサービスのいくつかは海外から輸入されたものです。でも、一般人にも理解される話をしなきゃいけないでしょ、という指摘があれば、それはよく分かります。
- 評価の観点、大事だったところ
審査結果は、自分個人の感想とは別でした。一番正しかったのは宇陀先生です。それは満場一致。
石けんブラザーズの発表は、なぜNDL(国立国会図書館)なのかが分かりませんでした。それは発表者が国立国会図書館員だったから、ネタだったと聞けばそう思うのですが、発表を聞いてる間はその点(国立国会図書館員だということ)には気づきませんでしたし、あえてNDLというならその理由が欲しかったです。
ちなみに、自分の第1部での投票はLieに、第3部は(アンケートで)酔いどれ西遊記に入れました。
どうせ身内でしょ、と言われてしまいそうですが、Lieはエンジニアリングというゆるぎない信念、コンセプトに共感したから。それが役に立つと実証できるサービスならその環境を必ず用意する、というのは、今までの図書館員に欠けていて、かつ必ず必要な視点で、図書館長が言うべき言葉だと思ったからです。海外でのサービスを輸入するのも、具体策を考えるのも、そんなのは優秀なスタッフがやればいいことだと思います。第3部は、純粋に話を聞いて、自分がついていきたいと思う館長に入れました。他の人の発表は確かにすばらしいですが、そのアラを突っ込みきれずに納得できませんし、館長がそれを言ってしまうと、スタッフは満足に批判できず、サービスのブラッシュアップができないと思ったからです。
「抜擢された図書館長」「就任演説」「若手」など、用意された条件があるにもかかわらず、結局よくある図書館サービスを提唱して終わるのかな、と思いました。でもそもそも、「就任演説」と、「賞金を使って実行して欲しいと思うチームに投資」という評価条件がずれているのですね。
筑波大学の質の高い図書館情報学教育(つまり図書館に関係ない経営学、経済抱くの授業など)のおかげで、図書館長は経営者だと理解しています。経営者とスタッフの違い、の意識の無さに納得がいかなかったのが本音です。もちろん司書資格を持っている館長、言いかえれば組織について知っている館長が望ましいとは思いますが、別に図書館のこと知らなくても経営者にはなれるからです。
- 最後に
とまあ、いろいろ言いますが、それでも揺るぎなく思うのは、図書館総合展にL-1や若手によるフォーラムのように、若手と呼ばれる人たちを参加させたのは素晴らしく、評価されることだということです(えらそう)。それまでと比較して。
大きな一歩だと思うので、これからもっと良くなればいいなと思います。
*1:それこそ、「若手ライブラリアンのためのワークショップ式登竜門」なので、若手にお前ら調子こいてんじゃねえぞ、って言う会だったのか