本の未来をめぐる若手パネルディスカッション(第12回図書館総合展フォーラム)


11/24-26に開催される、図書館の祭典ともいうべき図書館総合展
その第1日目が開催されました。

11/24 (Wed) 15:30-17:00
「本」の未来をめぐる若手パネルディスカッション

  • 協力
    • アカデミック・リソース・ガイド株式会社


速報、ということでhumottyが参加したフォーラムの記録を挙げたいと思います。*1
図書館総合展は、後2日間、パシフィコ横浜にて開催されています。もしこれを読んで、面白そう!と思う人がいれば、明日横浜に来れば今からでも参加できるのです。(このフォーラムは終わってしまいましたが。)
ということで、荒削りながらフォーラムのレポートを上げたいと思います。
総合展終了後、また加筆訂正したいと思います。

それでは、個人が聞きとった記録という点をご理解いただきつつ、どうぞ!

フォーラムの前に

  • 会場での質疑は行いません。
  • Twitterで、どんどん突っ込んでください!

このフォーラムについて

  • 【原】
    • 国立国会図書館の若手有志で企画・実行
    • たくさんの方にご協力いただきました。ありがとうございます
    • なぜこのフォーラムをいただけたのか?
    • 若手が真剣に議論し、活動していることが評価いただけたのかな
    • 今回のパネリストは、みんな若手としてとても精力的に活動していらっしゃる方たち

パネリストの紹介

  • 【梶原】(扶桑社)
    • 雑誌協会などで活動
    • 一番出版社の中におり、流通寄りの立場にある
    • 出版社は変わらなければならない。しかし
    • 会社は猛スピードで走っている車のようなもの。急にカーブを曲がることはできない
    • どのように進んでいけばよいのか
  • 【谷】(大学図書館員)
    • 大学図書館で働く以外に、関西で飲み会などネットワーク作りを行ったいる
    • 特に自己紹介はしないが、今回は個人の思いを強く出していきたい
  • 【浅井】(Web文芸誌『マトグロッソ』編集長)
    • マトグロッソの編集長
    • これまでいくつかの出版社で雑誌を作ってきた
    • Amazonと協力し、今年の5月にWeb文芸誌を刊行
    • みなさんのお話を伺いたい
  • 【高橋】(鳥取県立図書館
    • 鳥取県立図書館の職員。現在は育児休業
    • イタリアの野菜がどれくらい日本に輸入されているか、お金がなく弁護士が雇えないがどうしたらよいか、そんな質問を図書館が受けた
    • たくさんの人が図書館に情報を得にきている。
    • 情報がデジタル化している今、どのように図書館は対応していけばよいのか。考えたい
  • 【内沼】(numabooks)
    • ブックコーディネーター、
    • 洋服屋さんや雑貨屋さんなどで本を置く場合の、選書やデザインなどを担当していた
    • 最近は電子書籍関係などを、フリーランスで行っている。
    • 今回は若手。若手じゃない人たちは、今の状態を、どこかで変えたくないと思っているかもしれない。
    • 若手の人には、これからどうしていくか、考えていただければいい。

今日の参加者

  • 【原】
    • パネラーには各方面の若手を集めてきた。
    • 参加している人には、「自分が何をできるか、していけるか」を考えていただければいい。
    • 今日はどんな人が来ている
      • 図書館員:多い70%くらい
      • 出版社・書店:1人ちょいくらい
      • 学生:わりと。10%くらい。
    • 学生はパネリストより若い世代。お前らなんかもう古い、みたいな意気込みで聞いてほしい
    • イムリーに「ブックビジネス2.0」という書籍の電子書籍版が発売された。それについて宮田さんから

ブックビジネス2.0

  • 【宮田】
    • 紙の書籍を元に電子書籍
    • 7人の著者に、これからの本の立場がどのようになっていくのかを語ってもらった
    • 電子書籍版では、目次が浮いていて、じわじわ動いている
    • 各章の目次がどこからでも読めるように
    • 特徴的な機能
    • 紙の本と電子書籍アプリの違いの一番の売りは?
      • 読書で、良いなと思ったことを他の人と共有できるのが、一番良いと思う。
      • 図書館で読書会なども行われていますが、そういうことにも使えると思う

マトグロッソ

  • 【原】
    • 「ブックビジネス2.0」は先に紙版があったが、「マトグロッソ」は電子版からなんですっけ?
  • 【浅井】
    • マトグロッソ」は先に電子版で作ってから、紙を発行した。
    • 紙→電子だと、バラ売りという考えになるが、もともと制限がないので、適切な長さで作ることができる
  • 【浅井】
    • マトグロッソ:深い森
    • インターネット上にあるのに、ページが見つけにくい。奥地にあるので、探して見つけてもらおうと
    • 森見さんの連載は、その週に書いてもらったものを書いてからすぐに更新している
    • さっきのページは目次だが、Webでは全文掲載されている
    • 長尾館長と円城さんとの対談や、李さんの対談など
    • 年明けから再開予定
  • 【原】
    • 画面はどのように?
  • 【浅井】
    • まだ模索段階だが、Webだからといって写真や動画を入れなければいいけないわけではない。
    • ものを「読む」ということに最適の形を探している
    • どうしてもフラッシュなどを使ってしまうと、ブラウザの環境によって見にくくなってしまうので、まだ考えている最中
  • 【原】
    • 以上の2つの電子書籍について、内沼さんはどのようにお考えですか?
  • 【内沼】
    • 「ブックビジネス2.0」の画期的な特徴を補足すると、今ほとんどの電子書籍はコピー&ペーストができない。著作権の問題で、本文を抜き出すことはできないが、「ブックビジネス2.0」ならそれが可能
    • 今は技術や環境で制約されることがある。それはこれから発展していくもの
    • 自分は、デジタルであるのにコピペできないというのはおかしいと思う。これから、コピペができるような本が主流になっていくのでは
  • 【梶浦】
    • 自分はまだその段階までいってないと思う
    • 自分の宣伝を2つ、させていだく

電子書籍版の週刊SPA!と、勝間和代電子書籍販売

  • 【梶浦】
  • 電子書籍版の週刊SPA!について
    • 週刊誌は、駅の売店での販売が実売の半分以上
    • 最近、JR西日本は駅の売店をどんどん潰して、コンビニを作っている
    • 10件の売店をつぶして、1件のコンビニをたてる。週刊SPA!が人目に触れる機会は、少なくても3割に落ち込む
    • SPA!のコンテンツをどのように広めていくか
    • PDFベースで紙面になっている
    • iPadでは、拡大しないでもかろうじて読めるかといったところ
    • iPadの登場で雑誌は一割売り上げが伸びた
    • 雑誌の露出機会を上げる動き
    • 徐々に、動画など他の種類のコンテンツを含めてみたりしたいと考えている
  • 勝間和代さんの書籍の電子書籍
    • 勝間さんの本が先週からiPhone アプリに
    • 画面のサイズに合わせて文字を拡大するなど、最低限の読みやすさ
    • 勝間さんの本をどのようにプロモーションするかということで、発売後十日間だけ約800円のところを115円で販売
    • 利益は全くないが、話題になり、プロモーション効果は大きい
    • 今まで勝間さんの本を読んだことのない著者にアピールしたいという思いもあったので、価格戦略で多くの人に広めたい

図書館について

  • 【高橋】
    • 図書館にはいろんな人が来るが、おそらく、電子書籍を読みたいという人は来ない
    • 例えば弁護士を雇えなくて相談に来た人には、適切な機関を紹介した
    • 難病について困っている人には、適切な機関の機関誌を提供した
    • 紙の本だけ、電子書籍だけ、というのは利用者本位ではない
    • 情報の内容が、利用者の求めているものであれば、紙の本でもパンフレットでも電子書籍でも、なんでも提供するべき
    • 良いお店の紹介などは、本来は答えられないが、口コミサイトなどを紹介できれば利用者は幸せになるかも
  • 【谷】
    • 大学でレポートが出されると、一冊の本を求めて20人の学生が来る
    • 最初は気付かない。一人目に提供してしまい、後の人には渡せない
    • 電子版、誰でもアクセスできるWeb上にあれば、そういったときに助かるかも

出版社について

  • 【原】
    • 図書館は出会いの場所、求めている情報を適切に紹介する場所なのかなと思う。それに対して、出版社というのは、どこに本質を持っているのだろうか?
  • 【梶原】
    • 本質的に出版社がどうなのかということは、インタビュー記事にも書いたが、おそらく編集者。営業が残ることはない
    • だから、やるべきことは、書き手の人によりそって、良いコンテンツを作っていくこと
    • これからはそれが電子書籍になったり、Webコンテンツになったりするのだろう
  • 【原】
    • 浅井さんは編集者寄りだが?
  • 【浅井】
    • やはり、編集者の本質は読者の人に良いコンテンツを届けるということ
  • 【原】
    • 浅井さんは、編集者はいまとても幸せな時代に生きていると言う。伝えられるたくさんのメディアがあるし、自分が何を伝えたいかという、編集者の本質に立ち返って仕事をすることができる、と(事前の)インタビューでおっしゃられていた
    • 宮田さんはWeb業界と出版社業界を両方体験されているが
  • 【宮田】
    • 著者に向かい合っている時間が多いので、そちらに偏ってしまう。もう少しバランスをとらないとと思う
    • 読者のコミュニティなどに目を向けることも大切
  • 【原】
    • 読者体験の共有やソーシャルリーディングがある。未来の方法を語る点について、その観点は欠かせないと思う。
    • 内沼さんは、読者体験に共有について取り組まれていることや考えなどは?

本とのつながり

  • 【内沼】
    • その前に、今せっかく出ているアイデアをまとめたい
    • 自分は、図書館の役割は、聞かれたことを答えるだけではないと思う
    • 「聞かれたことに答える」というのは、図書館だけではない。検索エンジンなどの精度も上がっている
    • 図書館の役割には、「本との出会い」があるのではないか
    • もし紙の本がなくなるとすれば、まずなくなるのは書店
    • 駅のキオスクがなくなるように、どんどん本の接触機会がなくる。
    • 図書館は、紙の本の接触機会を提供して、興味を広げる役割があるのでは
    • コミュニティをはぐくむということ。コミュニティができておいしいのは、そこで新しいビジネスができるから
    • コンテンツを新しく作り、そこからコミュニケーションを広げる。誰が担当するのか、それとも分担するのか
    • 図書館は、作られたコンテンツを人とつなげられるのでは
    • 本というのはコミュニケーション。
    • ソーシャルリーディングは、たとえば本のテキストがあって、それをネットで流すこと
  • 【高橋】
    • 自分も、つながりというのはとても興味がある
    • 育児をしているが、とても大変。そこで、作ったレシピや情報などを流して、反応があると嬉しい
    • 図書館も、主婦の待ち合わせや会話があったり、つながりの場になる
  • 【梶原】
    • 出版業は、今作業がデジタル化されてほとんど一人でできる
    • 逆に図書館は一人でもできるのか?
  • 【谷】
    • 図書館を一人だとすると…何を考えればいいのだろう
    • 一人というと…六本木ライブラリーとか?
  • 【内沼】
    • 図書館は一人でできるのか、という話は、つまり、編集者は出版社がなくても仕事はできる。図書館員は、図書館がなくても生きていけるのか?ということかな
  • 【高橋】
    • できないのかな…と思う。サーチャーなどはいるが
    • 図書館は図書館員の場所ではない。みなさんのもの
    • みなさんに積極的に参加してもらわないと
  • 【宮田】
    • もし自分が明日から勝手に車を借りて、移動図書館を始めたら、それは図書館なのか?
  • 【谷】
    • 自分はこの話を受けたとき、「本の未来」は想像もつかないから、過去を探っていた
  • 【原】
    • 自分はむしろ、一人でもできる図書館を探したい
    • 資料は国立国会図書館の資料をなんとかしてもってこれるかもしれない
    • そういったものを活用して、人と人との出会いをプロデュースする。図書館員屋さん。そんな人がいてもいい
    • 図書館員はかっこいいイメージがあまりないけど、これからはテレビで、「人と人との出会いをプロデュースする図書館員です」とかっこよく登場してもいいかもしれない
  • 【内沼】
    • Twitterから)図書館はこれから情報を発信しなければいけないのか?という話があったが
    • 図書館は、図書館に来ない人を図書館に呼べるように頑張らないといけない。イベントを企画したり。
    • 最初にあった、イタリアの野菜の輸入について、図書館に聞いたら答えてくれるのか、ということはみんな知らない
    • 今壇上にいる人は答えてくれるかもしれないけど、ある図書館に行って、聞いて、「はあ?」って言われると嫌だし
    • それは図書館のブランディングかもしれない
    • どうやっていくか、自分で考えて、それを周りの人たちに広めていかなければいけないのではないか?
  • 【高橋】
    • その通りで、図書館はこれからもっとアピールしなければならない
    • 来ない方がいいと思っている図書館員がいるのではないか、という話があったが、そんな人は図書館員を辞めた方が良いと思っている
    • 何百人も蹴落としてきたんだから、ちゃんとした意識を持ってほしい
    • 利用者の人に、図書館の理解や認識を深めてもらうことが必要
  • 【原】
    • あくまで図書館があって、そのなかでどのように活動するかを考えるのも重要だが
    • さっきの「人と人とをつなげるコーディネーター」は図書館員でなくてもいい
    • 図書館員がPRが足りないというのは、耳の痛い話ではあるが、図書館員がやってもいいし、そうじゃなくてもいいと思う

これからどうしたいか、という話

  • 【浅井】
    • 自分は今媒体を作っているところ。ナショナルストリートプロジェクトとは、プロの作家ではなくて、普通の人に体験談などを書いてもらうプロジェクトだが、そのような窓を作っている
    • 表に出てこない人が何を考えているのか、そういうことを出す場所を考えていきたい
    • 情報を探すときに、知っていること以外の情報を得るのは難しい
    • 情報を求めに図書館に行くことはあるが、何が知りたいかもわからない時に、指針をくれたり教えてくれるような図書館にあって欲しい
  • 【谷】
    • 図書館がもったいないと思うのは、図書館が持っているものを充分に発揮できていないこと
    • カレントアウェアネスアウトリーチ、レフェラルサービス、そんなサービスはたくさんあるが、それらは十分に発揮できていない
    • そういったサービスを充分に発揮できるようにしていきたい
  • 【梶原】
    • たんに作ってるだけでは意味がなくて、どうやって読者に読んでもらえるか
    • 本との接点はブックオフなどの新古書店も含めて、利用者の立場からはたくさんある
    • そういったものを、勉強して、把握していないといけない。それらすべてを含めて、これから勉強して考えたい
  • 【宮田】
    • 紙の本について、もっと詳しく勉強していきたいと思う
    • 電子書籍にについて活動していると、「では紙の書籍についてはどう思いますか?」と良く聞かれる。でも、十分にこたえられなかった。
    • 図書館については、人の便利になる場所である一方、一人になるとか、日常のしがらみから解き放たれて過ごせる場所だとも考えている
    • そういった役割を図書館に期待している
  • 【原】
    • 今図書館のことを話しているが、要は、これからどんな社会を作っていくかということ
    • 情報に出会える社会は、とても豊かな社会
      • 情報を流通する社会を、これからどう作っていくかということではないか
  • 【内沼】
    • 元々、本の面白さを人に伝える仕事をしたいと思っていた
    • 図書館員や書店に勤めたらできないこと。構造そのものを変えたいと思っていた
    • みんながどういうものを面白いと思うか。本より面白いゲームも、ゲームより面白い本もある。本は開かれた形になっている
    • あえて本にこだわるなら、本が、面白そうだなと思ってもらえるような活動をしていきたい。それは、ここにいる皆さん共通の思いだと思う
    • 今は細かい役割分担で、些細な話に行きついてしまうことが多いが、最初には大きな話をしなければいけない。大きな話をして、方向性を決めてから役割分担をしないと
    • ビジネスだからそう簡単にいかないと思うかもしれないが、考えないわけにはいかない
    • そんな仕事をしていきたい

「本を面白くする」アイデア

  • 【原】
    • では最後に、みなさんから「本を面白くする」アイデアを聞きたい
    • まず自分から
    • 国立国会図書館には膨大な本がある。それまでは興味がなかったが、大観して初めて面白いと思えた
    • これまで積み重ねた人間の知識や、本を、面白いと思える体感を作っていきたい
  • 【梶原】
    • 図書館員、本を面白いかも、かっこいいかもと思ってもらえる仕組み
    • ひと昔前だと、月9でジャニーズに図書館員になってもらったり
  • 【内沼】
    • きっかけづくりがうまい人が、そう多くない業界なのかなと思っている
    • ドラマ化みたいなことをなんで皆はしないんだろう?
  • 【宮田】
    • Jリーグみたいな社会的なムーブメントが盛り上がっている。それはなぜか
    • 図書館でなくともいいが、つながりを作っていきたい
  • 【原】
    • 図書館かわいいプロジェクトを行っている。それは図書館ではなくても良いかもしれない
  • 【浅井】
    • 「分かる」という価値観を変えていくのが必要なのかな
    • すぐに分かるとか、10分で分かるとか、そういったニーズの下で本を作ると本は軽くなるのは当たり前
    • 「これはこういうものです」とすぐ分かってしまうことをやりたくなくて、文芸という分野でパッケージングした
    • 不便もあるが、分り易くないからこその面白みがある
    • そういった視点での考えが必要であると思う
  • 【谷】
    • 本とかは、時代がある。昔は分らなかったけど今は分かるとか
    • 時を超えた出会いなどを提供していくのは、図書館ではないのか

感想

いろいろ考えるきっかけになったのですが、感想はまた後日と言うことで。
あと2日、めいっぱい楽しめればと思います。

*1:いつものことですが、これを書き始める前にmin2-flyさんは既にブログ記事を更新されていました