ブックビジネス2.0 第1回セミナー 《本、アーキテクチャ、生態系−電子書籍語りバブルを越えて》 イベントレポ
遅ればせながらですが、今週の月曜日に開催されたブックビジネス2.0 第1回セミナーに参加してきました!*1
- イベント詳細
- 日時:2010年10月25日(月)19:45会場(20:00開演)
- 場所:デジタルハリウッド大学 メインキャンパス(秋葉原ダイビル7F)
- 参加費:当日3,000円、デジハリの学生は無料
- 登壇者
- ナビゲーター
- タイムテーブル
以下イベントレポになります。
当り前なことですが、以下にあるのは全部humotty自身が見聞きしたことを勝手に解釈したものなので、そこのところを理解したうえで読んでいただければ幸いです。
あと、今回はまとめず記録した話をそのまま書いていますので、自分でも話の論理的な流れが意味不明なところがありますが、それは自分の記録が拙いためなので、そこのところも生暖かく見守って下さればと思います。
電子書籍版「ブックビジネス2.0」のデモンストレーション
- 仲俣さん
- 紙の本を編集、出版してすぐに電子化することになりました。
- (と、以下ブックビジネス2.0のアプリ版のデモンストレーション。書画カメラでスクリーンに投影しながら解説。)
話に上がったのは、こちらでも述べられている機能で、実際に操作しながら説明を聞くことで、より楽しく面白そうなものに。
以下にその機能をいくつかご紹介。イメージなどが上記のリンクから見ることができます。
- 電子書籍版の目次
- うようよ動いてる!
- 特徴的なのは、紙の本でのコンテンツの「順番」はすでに失われていること
- ページめくりが可能(不快感を感じない素早い速度で)
- テキストの各種設定が可能
- フォントとその大きさの設定(5段階)
- 縦書き・横書き変更
- 縦書きと横書きではそれぞれ別のテキストを用意し、各タイプで最も美しい形を用意できるように。(テキストを2種類用意。縦書き→漢数字、横書き→英数字)
- 立ち読み機能を実装
- 縮尺は小さいが、本文をそのまま全部立ち読みで読めてしまう
- Twitter機能(ソーシャルリーディング機能)
- これはいい、と思った文章をタップ、メニューからTwittterにログインしてツイートできる
- bkbに関するツイートや著者のツイートもその場で追えるので、著者の近況なども知ることができる
- クリエイティブ・コモンズのライセンス:著者全員許可いただく。
- 著作権を気にせず自由に引用、コピペ可能
- 読むページに実装されているボタン
- ブックマーク・しおりボタン、ツイッターボタン、環境設定ボタン、検索ボタン…
■電子書籍版を用意するうえで…
- 編集は大変
- タイトル別なので、それぞれの人気ランキングも出てしまう
- 無料のおまけつき(はじめに、座談会)
- とりあえず、本の中で「やりたい」っていったことをとりあえずやる!
- ひとつだけ実現できなかったのは、印税90%論
具体的な発売日は発表されませんでしたが、今月中に発売できれば、というところでしょうか…?
ちなみに、電子書籍版の各章の扉の一言引用では、humottyが選んでみた文章も少し採用されたみたいなので、購入の予定のある方はぜひぜひ注目してみてください☆
トークセッション1 (仲俣暁生さん×濱野智史さん)*2
- 仲俣
- 濱野
- 電子書籍の経験はあまりなくて、ミーハーな関わりくらい。電子書籍は面白そう。さっきのデモの感想は、目次から全部リニア、ばらばらにしてるのが面白かった。
- 本というものを考えるときに影響を受けているのは、80年代にはやったポストモダン思想に影響を受けていて、そこでは本は全部ばらばらにして、ハイパーテキストにして読んでしまえばいいんだよと言われている。
- だけど、ばらばらにして読もうにも、紙には限界がある。
- 思想界で長年言われ続けてきたことが、今電子書籍で実現しようとしている。これは新しいことのようにみえて、ある意味(80年代の思想の)忘却であったり、でも今実現されようとしているということが、すごく面白いと思う。
- 電子書籍ブームは、つまり電子書籍についての本が売れるているわけで、電子書籍が売れているわけではない。これはシニカルなとらえ方だけど、そこから変えていかなきゃいけない。
- 仲俣
- 紙の(本を利用している)人の拒否感などはどうなる?
- 濱野
- 「ネットバカ」*3では、本は時間かけてゆっくり読むけど、ウェブはすぐ読んですぐやめてしまう。メディアは人間に影響するから、ネットをやると馬鹿になる、みたいな考えが言われている。でもメディアをそのものを変えるのは難しいし、それはいつでも起きる議論でもある。
- 仲俣
- 濱野さんはどういうときなら自分の本を電子書籍にしようと思う?
- 濱野
- ソーシャルリーディングって、書く側はずっとやってる。思想系の本は、言葉の解釈を変えるしかない世界だから、もう2000年くらい前からずっとやってる。
- でもそれが、現代版になって、文学者は死ぬと書簡集を出すけど、ツイッターの著者追いも、それに似てるよね。ソーシャルリーディングの機能は、実はずっと昔からあったものを、現代版にしたようなもんなんじゃないかな。
- ニコニコ動画は疑似同期を与える。それは今までできなかったことで、画期的なこと。それを読書でも実現できるか、リアルタイムで読めるようになるかは、面白いと思う。
- ずっと昔は、読書はリアルタイムだった。大学での音読とか。黙読はなかった。
- それが近代に入るにつれて、黙読文化になり、なくなていった。
- それが、今ツイッターで再び音読というか、リアルタイムの同期性の提供が始まるのだろうか。
- 仲俣
- 新聞記者の主題を受けて思いついたが、今後同じ機能の本が出てきて、読者同士のがそれぞれの本を戦わせたりするのかも
- 濱野
- 思想家なんかは、自分で勝手に脳内で思想家同士を戦わせて、スパロボみたいに、そうやって新しい思想を生み出していく。
- それをソーシャルリーディング機能を使って、いろんな読者同士でやっていくのだとしたら
- 濱野
- 自分は自炊まがいのことをしている。電子化して、エバーノートにつっこんで、勝手に思いつくままにタグをつける。そうすると発想が結びついて新しい考えが生まれたりする。
- それを、いろんな人同士が協力したりしてやっても面白いんじゃないかな。
- 後書き込みも大事。有名な著者の蔵書から、死後書き込みが発見されたりして、それが保存されるように。
- 仲俣
- ツイッターのコメントは、まさに書き込みと同じ
- 濱野
- プラットフォームが広がっていくと
- 僕は既存のコンテンツを電子化するのはあんまりおもしろくないと思う。
- 仲俣
- 電子書籍に必要な機能とかありますか?
- 濱野
- 字を触るとかあると面白いかも。触覚みたいな。みんな字をゆっくり読んだりしないけど、触ることによって、字をゆっくり読む、文字と向き合うようなことができるようにあるかも。
- 適当なアイデアなのであまりいいと思わないけど、自分も本を読むときは速読ばかりであまりゆっくり読んだりしないので、面白いかもと思う。
- 仲俣
- 眼球の動きを追ったりはできないけど、ここは飛ばしたなとか、ここはゆっくり読んだなとか、そういうことが分かったりすると面白いかもしれませんね。
- 濱野
- 古典に戻って申し訳ないけど、引用文を原点にぱっととべると便利だと思う。アメリカの話とか聞くと。
- 濱野
- 今の話は、今までの出版文化ではありえないけど、それをユーザーが面白いと思って手に取れば、それは「生態系」となって進んでいくだろうし、逆に見向きもされなかったら、それは「生態系」にはならないだろう。
- 昨日の(濱野さんが出演した)ラジオでちょとっとでてきたのは、宮部みゆきさんの談話で、何度も何度も読むから、絵本とか、ぼろぼろになるのがいい思い出になる。記憶の堆積。それはアナログなメディアでしか起きないし、電子書籍にはない。
- それは逆転する考えでもある。プログラマからしてみたらそんなのそういう機能を実装するだけでいいとか。
- レコードでも、機能的には不必要なんだけど、なんとなくいいからといって「回す感覚」を残してる。
- 少なくとも現状ある、「デジタルだけでいいよね」というのはあんまり意味がないと思う。
トークセッション2 (橋本大也さん×濱野智史さん)
- 濱野
- 橋本さんが電子書籍に求める機能は何かあります?
- 橋本
- 速く読めるようになってほしいかな。
- 例えば、目で追いながら文字も動く、みたいな。そんな機能があればもっと早く読めるんじゃないかな。
- 濱野
- 面白そうだけど、目が悪くなりそう(笑)
トークセッション3 (橋本大也さん×岡本真さん)
- 岡本
- 紙の本って、まず、重いですよね。持っていくのが大変
- 究極の電子ペーパーもある。究極に薄くて、これが実現したら、また、パソコン読むとかが古い感覚になっちゃうんじゃないかな。
- 東京国際ブックフェアの富士通ブースでみた技術がそれなんだけど、それを見て、技術がハードとかソフトとかそういう概念を壊してしまうんじゃないかなと感じて。そういうのに関して、橋本さんはどう思いますか?
- 橋本
- 概念とか、そういうのは、どんどん壊れていくのではないかな。
- 人間の操作がなくなって、できる限り自動化する。それがコンピューティング化の方向なんじゃないかと。
- 岡本
- ソーシャルリーディングなんかも、人が何らかの価値判断をしている。
- コンピューティング化が進んで、自動化が進んで、タグだって勝手につけてくれるようになって、そうなったとき、人がもつクリエイティブって何だろう。
- 橋本
- 快楽を味わう主体として、人間は残るのではないか。
- いかに快楽を味わうか。機械で読めて感想も書けるけど、それを味わっているのか。
- 創造行為は人間にしかできない。猿にタイプライターをまかせて、稀に感動する小説が出てくるかもしれないけど、それは人間が選んでいる。それはやはり一種の快楽なのではないかな。
- 岡本
- ボットと文学とで論争でなったけど、ツイッターでも、構成されたものでなくて、ちょっとした感情の発露なんかも面白いんだけど、それをいかにクリエイティブにするかが、人間の領域なのかな。
- コンピューターは泣いたり怒ったりということができない。それは人間にしかできないから、そこに人間の余地があるのかもしれないと、この話を聞いて思った。
- 橋本
- コンピューターが人を感動させることは増えてきているかもね。
- 岡本
- 最近のコンピューターは性能がすごくて、スパムも見分けられない。機能が発達して、コンピューターが感動する小説を書くのかも。
- それは読み手の一人として、橋本さんはどう思いますか。
トークセッション4 (岡本真さん×李明喜さん)
- 岡本
- まず李さんの紹介を
- 李
- 李
- 李
- 今携わってるのがpingpongプロジェクト。*4
- これは、地図にTwitter上で呟いたものをマッピングしていくこと。()
- 建築家のアレキサンダーが提唱したパターンランゲージを、現在の技術で見出し、それをパターンのパターンというか、解析するということができるのではないかと考えている。
- RTや、一個人の移動が地図上でわかる。もちろんこれは恣意的なものだが、なぜそれをつぶやいたかには意味があるのではないか。
- これらはこれから解析していくデータだが、人間をセンサーとしてとらえて、環境に何が起こっているのか、をデザインも含めて考えていきたい。
- こういった一連の解析には、電子書籍も含まれるんじゃないかと考えている。
- 李
- 岡本
- ツイッターで李さんの話が面白すぎてぐちゃぐちゃになるという意見が(笑)
- この本にはビジネスの話はあまりない。それは怒られたりするけど、そんなことない。
- ブックビジネス2.0の中では、本の次の世界について描いている。これが電子化したとか、プラットフォームが移ったとかじゃなくて、中身が良いんだ。
- 李さんも、情報空間に壁を作るべきではないという話。これはメディアの方など関係しているのでは。
- 岡本
- d-labについて、いくつかお伺いしたいが、国立国会図書館の長尾館長などと対談されたり、図書館はどう関係しているのか
- 李
- 単純にそのころ図書館好きだったのがある。人との関係とか、はっとするものがある。
- ただ、大人になるにつれつまらなくなっていった。技術が発展しても、図書館は変わらなかった。情報は生ものだと思うが、図書館でいう情報は違う気がする。何なんだろうと。
- そこに、長尾館長が国立国会図書館の館長になられた。面白そうだなと思っていたら、長尾ビジョンとか、いろいろ出されて、長尾館長がいるうちに自分の考えをぶつけたら、図書館が変わるきっかけになるんじゃないかと思った。
- d-labの前に対談する機会があったが、そこで盛り上がり、d-labの話もできた。
- 岡本
- 図書館が面白くなるのは、そのソーシャルさなんじゃないか。耳をすませばのような、手が触れ合ってみたいな。そのソーシャルさを持たせていくというのが、d-labでありpingpongではないだろうか。
- どこれから、どういう風に図書館は変わっていくのか、李さんは変えていきたいのだろうか
- 李
- 図書館、特に公共の図書館は残っていくべきだと思う。パブリックなものだから、重要だし、役割も変わっていくだろう。関係性は、技術の発展などから、とらえられるようになってきた。パブリックというものの捉えかたも、変わらなければならない、変わるだろう。
- これは、図書館でなくてもいいかもしれないが、今興味もあるし、長尾館長がいるし、このタイミングで図書館に関わっていかなくてどうするんだと。
- 図書館は動かしてみないと分らない。設計主義的な、こう動かしていくんだというのではなくて、行き当たりばったりの。これはウェブや設計者からしてみれば当たり前のことで、とりあえず作って動かしてみる。
- そういうの(とりあえず作って動かしてみること)が有効だという方法論が出てきているので、ぜひトライしていきたい、ということです。
- 岡本
- 李さんと長尾館長の素晴らしい本ができつつあるらしいが、その本と題材がかぶりあっているし、ソーシャルリーディングで提供される新しい関係があるのではないか。
- 岡本
- 出版の方が多く来られているようなので、一言言うが、斜陽の世界で働きたいと思う若者はいない。出版側が図書館を仮想敵にするのはおろかの一言に尽きる。
- 情報や知識、というのはもっと幅広いもの。出版の人に、つまらない世界ではなく、もっと広い世界を見て関わった方が面白いんでないかなと言いたい。
- 李
- 僕が言うデザインとは、現象に関わって、何かを変えていくのをすべてデザインという。「デザイン良いけど機能悪い」っていう話があるけど、機能も含めてデザイン。
- 今までは現象をあまり気にしていなかった。そういった、現象に関わるデザインをしたい。
おわり
イベントレポートは以上になります。
レポートというより、ただの記録ですが…。トークセッションの内容がとても面白かったので、簡単に内容をまとめてしまうのではなく、話し手の雰囲気をそのまま伝えられたらと思って、そのまま書いてみました。
ブックビジネス2.0のアプリ版の発売にかこつけてはいますが、内容はそれにこだわらず、本やデザインなどの幅広いテーマに渡っていて、とても面白かったです。
最後に、このようなイベントを企画してくださった実業之日本社の方、また素敵なお話を披露くださった魅力的な登壇者の方々に感謝をこめて。
ありがとうございました。
*1:完璧な余談ですが、こういったレポート記事はmin2-flyさんのブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」をリスペクトしているのですが、humottyが5日前のイベントレポを四苦八苦しながらまとめているところに30日(今日)開催のイベントレポを上げていらして、がくぶるでした。。
*2:橋本さんのご都合により、急きょ仲俣さんと濱野さんの臨時トークセッションを設け、橋本さんと濱野さんのトークセッションは10分程度の短いものとなっています
*3:ニコラス・G・カー「ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること」
*4:10/30にプロジェクトPing pongのシンポジウムを開催していて、前述のmin2-flyさんのレポート2010-10-30に詳しくあります