桃山学院大学司書・司書補講習50周年記念講演
9月18日に行われた桃山学院大学司書・司書補講習50周年記念講演に参加してきました。
実家から自転車で10分、久しぶりの見慣れた土地で、講演とシンポジウムも予想以上に面白いものでした。
参考URL
- http://www.andrew.ac.jp/extension-center/infomation/PDF/shisyo50.pdf
- 講演のポスター(PDF)
- 桃山学院大学司書・司書補講習開講50周年記念講演 岡村光章氏基調講演 - Togetter
- @arg(岡本さん)の中継も含めたTogetterまとめ
- 2010-09-18(Sat): 桃山学院大学司書・司書補講習開講50周年記念講演「図書館にとっての真実と幸福な未来への模索」で登壇 - ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版
- アカデミック・リソース・ガイド(ブログ版)の報告
- Andrew50th(20100918)
- 岡本さんの発表(シンポジウム前の10分のミニトーク)のスライド
以下に、humottyが聞き取れた・理解できた範囲の内容での記録を掲載します。
記録を取ること・まとめることにも慣れていませんので、未熟な者の記録として
ご了承いただいた上で読んで頂けると幸いです。
※太字になっているものは、humottyが好きな言葉、感銘を受けたもの等個人の判断によるものです
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開会挨拶 桃山学院大学 大学長
祝辞 日本図書館協会理事長 塩見昇氏
- 40年近く、司書講習の講師をやっていた。
- 司書講習について
- 1951年から始まっているが、最初は図書館法に学部の規定などがあったため、国立大学が対象だった。
- 1952年の図書館法改正で規定が廃止され大学に委嘱になったので、私立大学がメインに。
- 桃山学院大学は1959年に開学、1960年から司書講習が始まった。そこから50年間続けてきたのは桃山学院大学だけ。
- 初めて講師を担当したのは1968年。大阪市立図書館が一度に20数名司書を採用した時は、3分の2が桃山の受講生だった。経験として、桃山の受講生は全国にまたがって、図書館に関わっていると思う。
- 桃山学院大学の司書講習の特徴
- 講習には初めから日本図書館研究会が深くかかわっていた。
- 司書・司書補の講習以外にも、折々のテーマに関する特別講座(公開講座)が開かれていた。
他にも、初めて視聴覚資料、スライドで写真を見せたときの感動や、労働闘争に関することなどが思い出としてある。
基調講演 岡村光章氏「変貌する公共図書館と図書館ネットワークー国立国会図書館の取り組みを通じてー」
- 自己紹介
- 国立国会図書館調査及び立法考査局議会官庁資料調査室主任
- 長尾先生の代理
- 国立国会図書館関西館に勤め、中期基本計画の策定や関西の主要図書館に直接広報したこともあり、関西の図書館には特別思い入れがある。
- 新しいタイプの図書館の誕生
- 国立国会図書館の図書館協力業務の歴史
- 国立国会図書館の取り組み
- 関西館が中心となっているサービス
- レファレンス協同事業データベース:レファレンスの経験を蓄積して、スキルアップにつなげる。
- 参加館:大学(7.9%)、公共
- データの登録件数:53,740件、公開しているのは32,697件
- インターネットを通じた参加館の助け合い、離れていても規模が違っていても助け合えるというコラボレーションの実現
- 参加するのに初期投資は不要。固有のURLがあるので自館独自のデータベースも持てる
- レファレンス事例データ:「質問」に対する「回答」だけでなく、「回答プロセス」「参考資料」なども記載
- 実際の事例:「二酸化炭素の排出について」
- その他調べ方データマニュアル、特殊コレクションデータ、参加感プロファイルデータ
- データベースの活用:図書館員にとってはサービスのアピール、改善など。研究者にとっては研究対象や教育素材など。
- レファ協データベースは今度の図書館の在り方として明確な1つの方向性を示している
- リサーチ・ナビ
- 一言で言うと、調べ物に役立つWebサービス。
- それまではいろんなコンテンツが林立してたが、リサーチ・ナビで横断検索が可能に
- 21種のデータベース。
- 目次データベース。
- 理解を広めるために派遣型研修を実施している:国会図書館に来る負担などをなくすために、講師を派遣。2年間で57館2000人の講習生
- 図書館員には、(ネット上でも)ナビゲーターとしての役割が求められている。
- 研修のタイプを組み合わせて効果的に行う試み
- デジタル・アーカイブの取り組み
- 2009年「文化・学術機関におけるデジタルアーカイブ等の運営状況に関する調査」
- レファレンス協同事業データベース:レファレンスの経験を蓄積して、スキルアップにつなげる。
- 「図書館にとっての真実と幸福な未来への模索」への問題提議
- 図書館員の原点:利用者と資料・情報を結びつけること
- 長尾館長の電子図書館構想には前提があって、紙の資源を節約するということ。
- 電子書籍はすべての利便性において優っているわけではない。二者択一の問題ではない。
- GoogleやYahoo等に対して、図書館の信用力による差別化。
- 質だけでなく、量にこだわらなければ。
- 製品(Product)であるがゆえに、品質と量の両方がそろわなければ成功しているとはいえない
- そのために連携が必須
- サービスの現場は図書館内だけでなく、インターネットも重要な場である!
- 大人を対象にしたサービスを重視し、「必要だ、役に立つ、他のものには換え難いものがある」と思われることが大事
- 情報格差をなくすためには、インターネットの浸透は圧倒的な武器である。
- 公共図書館も国立図書館も共に変貌する必要がある
- 国立国会図書館は、今後は収拾においても保存においても、書誌作成においても、国立国会図書館単独ではなく、その他図書館などとの協力・連携が大事
- グーグルの目標が「世界中の情報を整理する」なら、日本全国の図書館共同体の目標は「日本中の確かな、信頼できる情報を整理する」こと
- 図書館共同体による事業
- 図書館員によるソーシャルネットワーキングサイト。Librarian-SNS!
- 電子議会(e-Parliament):オバマ陣営を勝利に導いた
- まとめ
- 利用者と資料・情報を結びつけることが図書館の使命・役割である、それは今後も変わらないし、図書館員の幸福につながる
- 1. 地域のコミュニティにおける再構築
- 2. 大人へのサービスをより重視
- 3. 物理的スペースと電子的スペースが融合したサービス
- 4. ウェブの技術を使った大規模な図書館協力
シンポジウム「図書館にとっての真実と幸福な未来への模索」
- パネリスト
岡本さんの10分トーク
- 自己紹介
- クールビズで。
- 図書館関係でいろいろしてるが、本業はインターネット。Yahoo知恵袋を担当。
- 参考図書にブックビジネス2.0を!
- 作者: 岡本真,仲俣暁生,津田大介,橋本大也,長尾真,野口祐子,渡辺智暁,金正勲
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2010/07/16
- メディア: 単行本
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- 「図書館にとっての真実を幸福な未来への模索」を読み解く
- 図書館にとっての真実と幸福な未来とは何か?
- 真実:大規模デジタル化と大規模ウェブ化
- →別にいいんじゃないか。
- 「図書館を静かに」は最低。そんなのは他の場所へ行ってもらって、図書館ではもっとわいわいがやがやすべき。
- 岡崎市立図書館事件を知っているか?
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- 全体の3割(?)くらいが手を挙げる
- 岡崎市は終わった。日本の図書館は大丈夫かと心配になる。
- 技術についての知識もそうだが、利用者(様)を犯人呼ばわりしてしまった
- 大規模デジタル化、ウェブ化によって、ハッピーになる、その担い手に図書館はなれるか?
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- 図書館にとっての幸福な未来
- 一定の役割分担が図書館には必要では?
- 大規模なサービスの図書館や⇔小さい村の図書館など
- 図書館の機能分化を、コンピュータのシステム(OS、ミドルウェア、アプリケーション)に例える
- しかし、図書館の幸福=社会の幸福なのか?
- ライブラリアンもそう思って良い。ライブラリアンとして、人々の生活の支援を考えるなら、図書館にこだわる必要はない。
- 日本のライブラリアンの情報スキルは最低レベル。怒っていても仕方ないから、スキルを上げようじゃないか。
- →code4lib japanへのお誘い。一回2万円かかる。高いかもしれないが、職業人としてスキルを上げるためにそれぐらい払えないならプロではない!
- 一定の役割分担が図書館には必要では?
小池和夫さんの「知識創造型図書館」
ディスカッション
- 山本先生:それぞれ宣伝してもらったが、論点は2つ。1つは図書館はどのようにイノベーションを図るかということ。2つ目は連携について。アメリカでは議会図書館大学など、八ヶ岳型の連携がある。それは、日本では当てはまるか疑問。
- 岡村さん:自分は図書館が変身して果たすべき役割は他の機関が果たしてしまうと思う。そうすると図書館は不幸になる。だから、図書館は変身しなければならない。違うアクターが出てくると、図書館は乗っ取られてしまう。私にとっては、図書館が変身すべきだと思う。岡本さんはたぶん、着眼点は同じだけどま逆なんだと。
- 岡本さん:図書館はたくさんの事業をやっている。海援隊とか。いろいろ盛り上がってて、図書館は考えてるんだけど、それは本当に社会の役に立っているのか考えてほしい。地元の図書館も海援隊をしているが、本当に貧困対策をしたいなら、ドヤ街やハローワークに移動図書館を動かすべきだ。それは本当に社会の役に立っているのか?図書館にとってハッピーでも社会にとってハッピーなのか?それをいつも考えてほしい。
- 岡村さん:海援隊は極端な事例。ビジネス支援などで成功している事例は、利用者の役に立っている。海援隊を事例に出されて普遍化されると違うかなと。浦安など、成功したモデルを見てほしい。
- 小池さん:大阪市の図書館も海援隊に入っている。図書館はもっと役立つとPRする目的で、海援隊を作った。文部科学省がプレス発表して、記事などで取り上げていただいて、社会に露出し、知らせる目的としては良いと思う。また貧困対策について、大都市では図書館が貧困対策にしているわけではない。他にたくさんの予算がついている。対象が違うのであって、図書館の予算を貧困対策に回せというのは乱暴な議論。
- 岡本さん:だから図書館の人は甘いんですよ、と思う。それは来てくれモデル。自分にできることを、としか考えない。図書館に繰れば何とかなる、というだけなら、お金をかける必要がないと思う。自分から情報を届けるということを考えないと、自ら図書館に来る人だけを対象としてサービスをするのは、税金ですることではない。だからウェブ、というわけではなく、もっとできることはないのかと考えてほしい。例えば、どこかの作家の展示会をしたときに、展示会の会場に図書館の資料の案内を置くこと。PRと市民に根差すサービスになるかは別。PRだけだとただの目立ちたがり屋になる。
- 山本先生:ここで少し、日本図書館協会の常世田さんにも一言。
- 常世田さん:ここに並んでいる人は一流の人だけど、不幸なのは、それぞれの意見が正しくて食い違っていること。大きな組織をいかに動かしていくか。館長などと意見が違ってできない人はいる。そういうところをいかに騙してうまくまわしていくべきかだと思う。
- 岡村さん:そうとうに勇気がなければ手をあげて意見が言えない。のでトップの会議をグループに分けてディスカッションをするようになった。ただ、都道府県立図書館長の人たちは、必ずしも図書館の人ではない。意見を託されている気がする。聞いてみたら、「司書畑の人間ではない」とか。だから、なかなか一致団結して方向転換できない。司書の人とはツーカーで話せる。そこが原因では。
- 小池さん:大阪市立も館長は事務職。ただ中央自治体の財政は厳しい。たとえ館長が司書でもいきなり施策決定とかできない。市民の目からしたら、岡本さんの話もわかる。ただ、限られた財政でどれだけ頑張っているか。行政向けのサービスが大事だと思う。行政に分かってもらえないと市民には分かってもらえない。ただ、担当者は2−3年で変わってしまい、いちいち説明しなおさなければならない。徒労感がある。それでも、少しずつでも理解者を増やしていかなければならない。
- 岡本さん:図書館法は改正しちゃえばいいのではと最近思う。無料の原則とかいらないよね。無料という原則があるから運営が厳しいのであって、まあなくしたからといって上手くいくのは少ないと思うけど、大きな意味での経済効果を見えやすくするにも、解釈を変えられないかなと思う。そう考えると、もっと上手に指定管理者制度を使えるのではというのが本音。山中湖情報創造館とか、上手くいってるとこもある。そこの条件さえ改善されるなら、指定管理者制度も悪くないなというのが1点。また、先日アメリカのオープンガバメント2.0に参加してきたが、政府が持っている資料やデータを積極的に市民が利用して、事業を活性化できるようにしようということ。例えば、アメリカでトラフィックデータを公開すると、優秀な民間のプログラマが優れたプログラムを作って市民がハッピーになるとか。選挙で選ぶのか市民だから、市民に分かってもらうのが大事。すべての情報を市民に積極的に開示していくことが、幅広い市民の理解を得られるのではないか。図書館は特に。国会図書館も、積極的にデータを開示していく、そうして、市民に図書館がいかに役立っているのかアピールしている取り組みをしていけばいいのではと思う。
- 岡村さん:電子議会やGov2.0と似たような動きが世界中で起きている。自分の選挙区にSNSを作って、有権者の意見を聞き、賛成の多い方の案を採択する事例もある。もっと進んで、第2世代の民主主義的な動きも、実際にある。Webの力を借りて、直接主義的な民主主義に移行するとか。批判する議論もあるが、今後の方向性は、より透明性が高まっていくということ。上でもめたときは、これからは広く公開して市民に意見を聞くようになる。図書館長も、司書の9割が賛成しているのに反対するとかはなくなる。そういう状態は、日本にもそう遠くない将来来るのではないか。日本でも130人の議員がTwitterを使っている。少なくとも、透明性が高まるのは絶対。
- 山本先生:国会図書館のデジタルされたものを、どのように使うようにしてるのか
- 岡村さん:難しい問題で、デジタル化するときは出版界から反対をくらう。今いろいろな話をしているが、利害関係が難しいところ。
- 山本先生:無料原則や指定管理者制度については?
- 小池さん:国会の構想には期待をしている。ただ、図書館のためには違って、国民のためにということを意識して、協議に反映していくべき。公立図書館の端末で一人一人が享受できるようにお願いしているが、そのように、すべての国民のアクセスを保証していくようにしてほしい。無料の原則としては、アクセスの保障として原則は絶対であるべきだと考える。指定管理については、千代田区の図書館など成功していることろは、民間の発想でどのようにできるか成功している例。ただ、その他の図書館で実施されているのは、コスト計算がひどくて、民間の発想をいかせるようなコストではない。職員を育てるコストを完全に無視している。千代田区は、区長がそのコストを認めて、成功した例。小さな図書館で指定管理という例は、間違っている。小さな図書館でも大きなサービスはできる。地域のサービスを考えたとき、小さな図書館にも司書を置くべき。
質疑応答
- Q:10年以上関わってきた。質問で、1点目は、「図書館にとっての真実と幸福な未来への模索」というテーマだったが、司書にとっての幸福と図書館にとっての幸福は一致するかしないか。2点目、「真理が我々を自由にする」という国会図書館だが、市民へ情報を提供することは、市民の知識レベルを上げるということで、社会にとっての幸福である。よりよい個人、ではなく、よりよい社会をと考えたときに、何があるのか。
- A(岡本さん):ライブラリアンにとっての幸せと図書館にとっての幸せは、まあ違う。ライブラリアンが本当のプロになれるかどうか。日図協でも退職したから辞めるという人がいるが、退職したからと言って辞めるのはプロではない。流しのプロフェッショナルライブラリアンとか、できる。情報を構造的にとらえることができる。図書館情報学を学んだから図書館で働く、というのは自分に対する過小評価では。2点目は、個人を追及していくのは社会全体の豊かさではないと思う。一人一人が自分の幸せを追求できる社会が良い社会。その欲望を抑圧しない程度で社会設計を行う、図書館も。そうすれば幸せを追求できるかもしれないが、それには痛みが伴うだろう。
- A(小池さん):全体のスキルを上げるのが国力向上につながるのがOECDの考え。国の情報政策の中に、図書館を含めた政策が必要。知識情報の管理が欠けている。そこを重点的に行うべき。
- A(岡村さん):「真理は我らを自由にする」。これはあるが、長尾館長が就任されて、真理とは何かということで、抽象的だとおっしゃった。そこで、「知識は我らを自由にする」とおっしゃった。知識インフラは国力を上げる、それは確かだが、それはまだ日本にない。内閣府にも参加して、知識インフラの設立を頑張っている。
- A(塩見さん):知識インフラが国力を上げるのはそうだが、そのことがどういう形で一人一人に関わっていくのかを考えていくのが大事。その細かいところにどう日図協が関わっていけるか。
- Q:1点目は関西館の近くに私のしごと館があるが、その敷地を国立国会図書館が使うのはどうか。2点目は、文書館や博物館、美術館が図書館と一緒になってやる、という話はどうなのか。
- A(岡村さん):関西館には裏に敷地はあるので、しごと館の敷地は必要ない。MLA連携については、話はあるが、具体的な施策はまだない。そこは諸外国に比べて遅れていると思う。
- Q:茨木市は去年赤字になって、駐車場やらからお金を取る方向になった。そういう方向性はどうか?
- A(小池さん):図書館の立地によって違うが、たとえば大阪とかではそういう収入はやむをえないとおもう。ただ郊外で車しか手段がない場合、お金を取るのが良いことか、両立を考える部分はあると思う。
(時間になったので、以上で終了)
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岡村さんの講演が素晴らしく、またシンポジウムの討論もとても面白かったです。
シンポジウムの面白さは、岡本さんがヒールになりきって(笑)議論を活性化したからでしょうか。
ありがとうございました!
9/22 敬称が抜けていたのを訂正